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タイの医療保険、入る前に知っておくこと

バンコクの私立病院は相部屋でも入院1泊が1万バーツを超えます。タイの社会保険、タイで買う医療保険、日本側で入る保険がどこまで使えるのか、ビザで求められる補償額、保険料の決まり方、病院でのキャッシュレスの流れを公式情報だけで整理しました。

この記事の要点

  • タイの社会保険で費用がかからないのは、事務所が指定した医療機関だけです。日本語が通じる私立病院にそのまま行けるとは限らず、民間の医療保険や会社の保険はこの差を埋めるために持ちます。
  • 在留資格によっては保険が滞在の条件です。O-Aは補償の合計10万米ドル以上、O-Xは入院40万バーツ以上と外来4万バーツ以上、LTRは5万米ドル以上で、O-Xは保険が切れるとビザが取り消されます。
  • バムルンラード国際病院の表示では、入院1泊の合計が2ベッドの相部屋で10,600バーツ、シングルルームで14,700バーツです。ここに入るのは部屋・食事・看護までで、検査・手術・薬・医師の診療料は別に積み上がります。
  • 日本の健康保険の海外療養費は、日本国内で同じ傷病を治療した場合の費用を基準に計算されるので、タイで払った額との差は自分で負担します。申請は支払いの翌日から2年で時効です。
  • 窓口で払う額は、行く病院と保険会社のあいだに直接請求の契約があるかで変わります。契約が無ければいったん自分で払って請求する形になるので、入る前に病院の提携先の一覧を見ておいてください。

タイで暮らしはじめて最初に迷うのが、医療費の備えです。日本のように「保険証を出せば3割」という仕組みがそのまま続くわけではなく、タイの社会保険、タイで買う医療保険、日本側で入る保険が、それぞれ別々の役割を持っています。このページは、どれが何をカバーするのか、ビザでいくらの補償が求められるのか、保険料は何で決まるのか、病院の窓口ではどう扱われるのかを、公式に出ている情報だけで整理した「知るための」記事です。どの保険会社がよいかという評価は扱いません。

私立病院に入院すると1泊いくらか

先に金額の感覚をつかんでおくと、あとの話が読みやすくなります。バンコクの私立病院のひとつ、バムルンラード国際病院は、入院病室の料金を公式サイトに出しています。2026年1月1日から適用と明記された金額で、1日あたりの部屋代に加えて、サービス料と食事の分が別に積み上がる表示です。

病室の種類部屋代(1泊)サービス料・食事合計(1泊)
2ベッドの相部屋4,020バーツ6,580バーツ10,600バーツ
シングルルーム6,750バーツ7,950バーツ14,700バーツ
デラックス9,940バーツ8,260バーツ18,200バーツ
スーパーデラックス12,880バーツ8,320バーツ21,200バーツ
VIPスイート21,260バーツ10,840バーツ32,100バーツ
プレミア・ロイヤルスイート64,250バーツ14,050バーツ78,300バーツ

公式サイトは、この日額に「部屋・食事・看護サービス」が含まれると説明しています。つまり検査、手術、薬、医師の診療料は別勘定です。同じページには「すべての料金は予告なく変更されることがあります」とも書かれています。相部屋でも1泊1万バーツを超えるという水準は、数日の入院でも支払いがまとまった額になることを意味します。医療保険の話が現実味を帯びるのは、この金額を自分の財布から出す場面を想像したときです。

なお、これは一病院の公式表示です。病院によって料金は違いますし、公立病院はまた別の体系です。行こうと思っている病院の公式サイトで、その病院の表示を見てください。

医療費をまかなう三つの道

タイに住む日本人が使える備えは、大きく三つに分かれます。どれか一つで完結するというより、立場によって組み合わせが変わります。

  • タイの社会保険(ประกันสังคม) — タイの会社に雇われて働く人が入る公的な仕組みです。指定された病院での診療費がかからなくなります。
  • タイで買う民間の医療保険 — タイの保険会社の医療保険です。ビザの条件を満たすために入るケースと、私立病院の費用に備えて入るケースがあります。
  • 日本側で入る保険 — 海外旅行保険や、会社が用意する赴任者向けの保険です。日本の公的医療保険にも海外での治療に対する給付がありますが、後で書くとおり範囲が限られます。

働きに来ているのか、退職後の長期滞在なのか、短期の出張なのかで、どれが軸になるかが変わります。在留資格の側の話はタイの就労ビザと働き方の情報にまとめています。

働いて住むなら、まず社会保険

タイの会社に雇われて働く場合、社会保険(第33条の被保険者)に入ることになります。タイ社会保険事務所の公式サイトによると、傷病の給付を受けられる条件は「医療サービスを受ける月の前15か月のうち、3か月以上の保険料を納めていること」です。入ってすぐ何でも使えるわけではない、という点は覚えておいてください。

条件を満たすと、事務所が指定した医療機関(บัตรรับรองสิทธิ に書かれた病院)では、被保険者が費用を負担しないと公式サイトは説明しています。医師の指示で仕事を休んだ場合の補償も定められていて、賃金の50パーセント、1回につき90日まで、年間180日まで、慢性疾患の場合は年間365日までとされています。

保険料は給与から天引きされます。計算の基礎になる賃金には下限と上限があり、同じ公式サイトの給付の説明ページには「下限は月1,650バーツ、上限は月17,500バーツ(2569年1月1日から)」と書かれています。仏暦2569年は西暦2026年です。一方、保険料の納付を説明する別のページでは上限が月15,000バーツのままになっており、ページによって更新の時期が違います。料率そのものは「省令で定める率」とされていて、そのページには数字が書かれていません。自分がいくら払っているかは、給与明細と社会保険事務所の窓口で確かめるのが確実です。

納付の実務は雇い主側の仕事です。公式サイトは、雇い主が自分の負担分と被保険者の負担分をまとめて翌月15日までに納めること、遅れた場合は未納分に対して月2パーセントの追加金がかかることを示しています。

仕事中のけがは別の基金が受け持つ

同じ公式サイトは、雇われて働く人に関わる基金が2種類あることを示しています。ひとつがここまで書いた社会保険基金で、こちらは仕事が原因ではない病気やけがを含む7種類の給付を受け持ちます。もうひとつが労災補償基金(กองทุนเงินทดแทน)で、こちらは雇い主だけが納めるものです。保険料は1人あたり年24万バーツを上限とする賃金の合計に、業種ごとの率(0.2〜1.0パーセントの範囲)を掛けて計算すると説明されています。率が業種で違うのは、仕事の危険度が違うからだとされています。

つまり、仕事中に起きたけがと、休みの日に起きた病気では、面倒を見る財布が別だということです。会社に「保険はどうなっていますか」と聞くときは、この二つを分けて聞くと話が早く進みます。

会社を辞めたあとの続け方

雇用が終わったあとに、自分で保険料を納めて加入を続ける形(第39条の被保険者)もあります。公式サイトは第39条の被保険者について、月4,800バーツを基礎に省令の率を掛けた保険料を、毎月1回、翌月15日までに自分で納めること、給付は6種類になることを説明しています。第33条の7種類より1つ少ない点に注意してください。納め忘れると資格に影響するので、口座引き落としの手続きが用意されています。

ここで注意したいのは、社会保険で無料になるのは指定された病院だという点です。日本語が通じる私立病院にそのまま行けるとは限りません。私立病院を使いたい人が、社会保険とは別に民間の医療保険や会社の保険を持っているのは、この差を埋めるためです。

ビザによっては保険が滞在の条件になる

在留資格によっては、医療保険への加入そのものが要件です。金額の下限が公表されているので、ここは数字がはっきりしています。

在留資格求められる医療保険そのほかの条件
ノンイミグラント O-A(ロングステイ) 初回の申請では、補償の合計が10万米ドル(300万バーツ相当)以上で、新型コロナウイルスの治療を含むもの。保険証明書の提示が必須 申請日に50歳以上。滞在は最長1年
ノンイミグラント O-X(長期滞在) 1保険年度あたり入院40万バーツ以上、外来4万バーツ以上のタイの医療保険。滞在期間を通じて保有し続けること 申請日に50歳以上。日本を含む14か国の国籍者が対象。1回5年、通算10年まで
LTR(長期居住者) 5万米ドル以上の医療保険。または、タイの社会保険の給付を受けていること。または、本人名義の預金残高10万米ドル以上を12か月以上維持していること 4つの区分すべてに共通。条件はビザの期間中ずっと維持する必要がある

O-A と O-X の条件は、タイ損害保険協会が運営するロングステイ保険の案内に書かれているものです。同じ案内には、O-X について保険が切れると要件を満たさないと見なされ、与えられたビザが取り消されるとはっきり書かれています。加入して終わりではなく、更新のたびに有効な証明書を用意する種類の条件だと考えてください。O-A の更新については、入院40万バーツ・外来4万バーツという線が同じ案内と在シカゴのタイ王国総領事館の案内の両方に出てきます。

LTR の条件はタイ投資委員会(BOI)の公式サイトに出ています。同サイトには「投資額、雇用の状態、預金残高、保険の補償を含め、すべての条件をビザの期間中維持しなければならない」という注意書きがあります。

ここに書いた金額は確認した時点のものです。要件は変わることがあり、最終的な判断は申請先の大使館・総領事館とタイ入国管理局が行います。申請の前に必ず公式の案内を見てください。

タイランド・プリビレッジ(旧タイランドエリート)の場合

会員制のプログラムで長期滞在する道もあります。運営会社の公式サイトが示している会員費と有効期間は次のとおりです。ブロンズが65万バーツで5年、ゴールドが90万バーツで5年、プラチナが150万バーツで10年、ダイヤモンドが250万バーツで15年、招待制のリザーブが500万バーツで20年です。

会員費は滞在の権利に対するもので、医療費そのものを肩代わりする仕組みではありません。医療保険が特典に含まれるかどうかは、公式サイトが公開している特典の冊子(Full Privilege Book)と入会時の説明で確かめてください。会員であることと、病院の窓口で保険が効くことは別の話です。

日本の健康保険は海外でどこまで使えるか

日本の公的医療保険には「海外療養費」という仕組みがあります。全国健康保険協会(協会けんぽ)の説明によると、いったん現地で全額を払い、あとから申請して払い戻しを受ける形です。ただし、次の制約があります。

  • 日本国内で保険診療として認められている医療行為であること。美容整形やインプラントのような保険外の診療は対象になりません。
  • 治療を目的に渡航して受けた診療は対象外です。
  • 払い戻しの額は、日本国内で同じ傷病を治療した場合にかかる費用を基準に計算した額から自己負担相当額を引いたものです。海外で払った額のほうが低ければ、その額が基準になります。
  • 申請には、支給申請書のほか、診療内容明細書(様式A・様式C)、領収明細書(様式B)、領収書の原本と日本語訳、渡航期間が分かる書類などが要ります。
  • 治療費を払った日の翌日から2年で時効になり、申請できなくなります。

大事なのは3番目です。バンコクの私立病院で1泊1万バーツを超える部屋に入っても、戻ってくるのは日本の診療報酬を基準にした額です。差額は自分で負担します。日本の公的保険を「タイの医療費の備え」として当てにするのは無理がある、というのがこの制度の形から言えることです。なお、加入している保険の種類(協会けんぽ、国民健康保険、組合の健康保険など)や住民票の状況によって扱いが変わるので、自分の加入先に確認してください。

美容目的の施術が対象外である点は、日本側でもタイ側でも同じ考え方が出てきます。バンコクの美容クリニックについては、料金や評判をバンコクの美容クリニックの口コミと評価の側にまとめています。

保険料は何で決まるのか

タイの医療保険の保険料は、公式サイトに「一律いくら」と出ている類のものではありません。年齢、補償の上限額、入院だけか外来も含むか、免責の設定、これまでの病歴、対象になる地域(タイ国内だけか、アジア全域か、世界か)で変わります。だから各社とも見積もりの形をとっています。金額を知りたいときは、保険会社の公式サイトで自分の条件を入れて見積もりを出すのが唯一の確実な方法です。

公表されている数字のうち、確かなものは二つあります。ひとつは前に挙げたビザ要件の下限(O-A の10万米ドル、O-X の入院40万バーツ・外来4万バーツ、LTR の5万米ドル)です。保険料そのものではありませんが、「これ未満の補償では要件を満たさない」という線がはっきりしているので、見積もりを取るときの出発点になります。

もうひとつは、保険料が上がりやすいという当局の説明です。タイ生命保険協会が公表した保険監督委員会事務局(คปภ.)の説明(2025年1月24日付)では、医療保険の保険料は物価上昇や引受コストの上昇によって年平均でおよそ3〜5パーセント上がる傾向にあるとされています。長く持つつもりの保険なら、入るときの金額だけでなく、数年後の金額も考えておく必要があります。

更新のときに自己負担が付く仕組み

同じ説明には、保険料の上がり方をゆるめるための「Copayment(自己負担)」の考え方が2種類あると書かれています。

  1. 契約のはじめから自己負担を持つ形 — 加入者が自分から選ぶもので、保険料の割引をすぐに受けられる代わりに、請求のたびに契約で決めた割合を負担します。
  2. 更新のときに自己負担が付く形 — 次の更新年度から適用されるもので、次の条件に当てはまったときだけ発生します。

2番目の条件は、同説明によると次のとおりです。ひとつめの場合は、(1)入院の必要が医学的に認められない軽い病気で入院の請求をしていること、(2)請求が3回以上あること、(3)請求率が合計で200パーセント以上であること、この3つが同時に成り立ったときに、次の年度の治療費のうち30パーセントを超えない範囲で自己負担が付きます。ふたつめの場合は、(1)重大疾病と大きな手術を除く一般の病気での入院の請求、(2)請求が3回以上、(3)請求率が合計で400パーセント以上、の3つが同時に成り立ったときで、こちらも30パーセントを超えない範囲です。両方に当てはまると、合わせて50パーセントを超えない範囲になります。

同説明は、この判定は1年ごとに行われ、条件のどれか1つでも外れた年は自己負担が発生しないとも述べています。請求率の計算の仕方は契約の約款で決まるので、加入する会社の説明で確かめてください。日本で入る海外旅行保険は、この仕組みとは別の商品です。

病院で保険を使うときの流れ

保険を持っていても、窓口での扱いは「病院と保険会社のあいだに直接請求の契約があるかどうか」で分かれます。

  1. 受診の前に確かめる。 サミティベート病院は公式サイトで、自分の保険が治療をカバーするか知りたい場合は保険証のコピーと写真付き身分証を保険担当部署にメールで送るよう案内しています。窓口はタイ国内の保険と海外の保険で分かれていて、それぞれ別の電話番号とアドレスが公式サイトに載っています。
  2. 直接請求(キャッシュレス)が使えるか。 バムルンラード国際病院は公式の案内で、海外の保険会社およそ80社、タイ国内の保険会社30社以上、アシスタンス会社40社以上と直接請求の契約があると説明しています。契約があれば、窓口での支払いは保険会社との精算になります。
  3. 契約が無ければ立替払いになる。 同じ案内は、直接請求の契約が無い場合は「pay and claim(自分で払って請求する)」か、保険会社が提携するアシスタンス会社を立てる形になると書いています。退院時にクレームフォームと診断書を受け取り、領収書の原本とあわせて保険会社に出す流れです。
  4. 入院はデポジットが要る。 手術や処置で入院する場合、見積もり額の全額をあらかじめ預ける運用があります。保険会社からの支払い保証が届いたあとで精算されます。

ここから分かるのは、保険に入る前に「行くつもりの病院で直接請求が使えるか」を確かめておくと、実際の場面が楽になるということです。病院の公式サイトには提携している保険会社の一覧が載っています。契約する前に、その一覧に自分が入ろうとしている保険が載っているかを見ておいてください。

言葉はどうなるのか

病名や同意書のやり取りは、母語でないと不安が残ります。サミティベート病院は公式サイトで、院内に多数の通訳がいることと、日本語、韓国語、ビルマ語、英語、中国語、アラビア語、インドネシア語については無料で通訳を用意することを明記しています。ロシア語などそのほかの言語も手配できるとしています。ただし通常の診療時間外の通訳は追加費用がかかると同じページに書かれています。

保険の手続きは書類の言葉が問題になりやすい部分です。診断書や領収書の記載内容が保険会社の求める形と合っているかは、その場で通訳に確認しておくと、あとの請求で困りません。

救急のときにかける番号

急病やけがで動けないときは、タイの救急の番号にかけます。タイ国立救急医療センター(สพฉ.)の公式サイトは、サイトの上部に「เจ็บป่วยฉุกเฉิน โทร. 1669(救急のときは1669へ)」と常時表示しています。保険の有無を確かめてから電話する場面ではありません。まず1669です。保険の話はそのあとで間に合います。

入る前に確かめること

契約書を読む前に、次の点を自分の言葉で答えられるようにしておくと、見積もりの読み方が変わります。

  1. 入院だけか、外来も含むか。 ビザ要件の書き方が入院と外来で分かれているのは、この二つが別々に設定される項目だからです。
  2. 補償の上限はいくらか。 1泊1万バーツを超える部屋代に、検査や手術が積み上がることを思い出してください。
  3. 免責はいくらか。 自己負担が大きいほど保険料は下がります。どこまでを自分で持つかの線引きです。
  4. 直接請求が使える病院はどこか。 自宅や職場から通える範囲に、その病院があるかどうか。
  5. 更新のときの条件は何か。 前の節の自己負担の話に加えて、年齢による更新の上限があるかどうか。
  6. ビザの要件を満たす証明書が出るか。 O-A や O-X では、保険会社が発行する証明書の様式が決まっています。
  7. 日本側の保険と重なっていないか。 会社の赴任者向け保険がある人は、同じ補償を二重に買っていないかを確かめてください。

この記事で扱わないこと

どの保険会社がよいか、どの病院がよいかという評価は、この記事の役目ではありません。ZYRO では役割ごとに置き場を分けています。在留資格や働き方の条件を並べたものはタイの就労ビザと働き方の情報に、実際に行った人の評価はバンコクの美容クリニックの口コミと評価のような口コミの面にあります。ここは制度と仕組みを知るための面です。

体にまつわるほかの記事は、体と健康の記事一覧にまとめています。歯の治療でかかるお金の考え方はバンコクで歯医者にかかるとき、疲れをほぐしに行く場所の話はタイのマッサージはどんなものかバンコクのサウナ、入る前に知っておくことに書きました。

出典

このページの内容は 2026-08-31 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。