タイでメイドを雇うときの決まりと給料
タイでは家事の担い手を直接雇うと、家庭でも労働者保護法の雇い主になります。労働時間と休み、最低賃金、住み込みや外国人を雇うときの届け出、紹介会社の確かめ方までを、タイ政府の法令と公式説明資料だけで整理しました。
この記事の要点
- 掃除を週に何回か頼むだけでも、その人を自分で直接雇えば、家庭であっても労働者保護法の雇い主になります。清掃を業とする会社が自社の従業員を送り込む形なら、雇い主は会社のほうです。
- 2024年4月30日に家事労働の省令が入れ替わり、働く地域の最低賃金を下回れなくなりました。最低賃金は地域ごとに1日337〜400バーツの幅があり、バンコクは1日400バーツです。
- 守る最低ラインは、所定労働時間が1日8時間まで、休憩が1日1時間以上、週の休みが1日以上、祝日が年13日以上です。勤続1年を満たすと、年6労働日以上の有給休暇も付きます。
- 保証金を取ること、給料から勝手に差し引くこと、本人の同意なくタイバーツ以外で払うこと、支払いを月1回未満にすることは禁じられています。支払いが遅れると、遅れているあいだ年15%の利息が付きます。
- 住み込む人が外国人なら、その人が住み始めてから24時間以内に、住居のある地域を管轄する入国管理の窓口へ届け出る義務が、家主や住居の所有者・占有者にあります。
タイで「メイドさん」と呼ばれている仕事は、法律のうえではงานบ้าน(家事の仕事)という区分に入ります。掃除を週に何回か頼むだけのつもりでも、その人を自分で直接雇えば、家庭であっても労働者保護法の雇い主になります。2024年4月30日に家事労働の省令が入れ替わり、それまで適用されていなかった労働時間や最低賃金の条文まで家庭に及ぶようになりました。このページは、タイの法令と役所が出している説明資料だけを使って、頼み方の種類・守らなければならない最低ライン・給料の下限・住み込みや外国人を雇うときの手続きを整理したものです。どの会社や誰が良いかという評価は扱いません。
メイドに頼める仕事の範囲
労働省の労働保護福祉局は、省令15号(仏暦2567年)の公式説明資料のなかで、「営利の事業が混ざっていない家事」の例として次を挙げています。
- 家の掃除
- 洗濯
- 子どもの世話、高齢者の世話
- 庭の手入れ
- 警備
- 修繕
- 運転
- 料理
- ペットの世話
分かれ目は「雇い主の家庭のためだけの仕事かどうか」です。同じ説明資料には、自宅で美容室を営む人が、家事に加えて店で使うタオルの洗濯や店内の掃除もさせている例が出てきます。この場合は家事労働ではなく、労働者保護法がまるごとかかる一般の雇用として扱われます。反対に、事業を持っている人であっても、自宅の中の仕事だけを個人として頼んでいるなら家事労働のままです。慈善財団の手伝いをときどきさせる程度なら家事労働に留まる、という例も併せて示されています。
頼み方は3つに分かれる
自分で直接雇う(個人契約)
本人と直接約束して、自分の財布から給料を払う形です。この場合、あなたが雇い主です。省令15号は雇う人数が1人からでも適用され、相手がタイ人でも外国人でも同じように適用されると説明資料に明記されています。あとに出てくる労働時間・休み・最低賃金の決まりは、すべてこの形で効いてきます。
会社から出してもらう(派遣・請負)
清掃を業とする会社が、自社の従業員を家庭に送り込む形です。労働省の説明資料は、この場合家庭の側は雇い主ではないとはっきり書いています。給料を払っているのは会社であり、その人の働き方には労働者保護法が全部かかります。家庭が負うのは、会社との間で決めた回数・時間・料金の約束だけです。
ただし「自分は雇い主ではない」というだけで、来る人が無権利になるわけではありません。家事に限った省令ではなく労働者保護法そのものが会社にかかるので、労働時間や休みの守り手は会社です。家庭の側で気にしておくとよいのは、追加の作業を直接その人に頼み込まないこと、時間の延長を口頭で頼まないことです。会社を通さずに増やした分は、誰が払うのかがあいまいになります。
紹介してもらってから自分で雇う
会社に人を探してもらい、そのあと自分と本人が直接契約する形です。紹介が終われば関係は個人契約と同じになり、雇い主はあなたです。紹介料を払ったかどうかは、この判定に関係しません。
自分がどれに当たるか迷ったら、その人に給料を渡しているのは誰かを見てください。説明資料が挙げている判定も、実際にこの点を手がかりにしています。
個人契約にすると、家庭が守る最低ライン
省令15号は、労働者保護法のうち家事労働に適用する条文を並べたものです。労働省の説明資料は、旧省令(仏暦2555年の14号)から増えた保護を12項目として整理しています。主なものを表にします。
| 項目 | 最低ライン | 根拠 |
|---|---|---|
| 1日の所定労働時間 | 8時間を超えて決めてはいけない | 労働者保護法23条 |
| 休憩 | 1日1時間以上(連続5時間を超えて働かせる前に取らせる) | 27条1項 |
| 週の休み | 週1日以上。休みと休みの間隔は6日以内 | 28条 |
| 祝日 | 年13日以上。メーデーを含め、前もって知らせる | 29条 |
| 年次有給休暇 | 勤続1年を満たしたら年6労働日以上 | 30条 |
| 病気休暇 | 実際に病気の日数。3労働日以上続くときは診断書を求められる | 32条 |
| 病気休暇中の給料 | 年30労働日までは通常どおり支払う | 57条1項 |
| 私用の休暇 | 年3労働日以上 | 34条 |
| 雇える年齢 | 15歳未満は雇えない | 44条 |
私用の休暇について、説明資料は「休む権利はあるが、その日の賃金支払いまでは法が強制していないので、当事者の取り決めによる」と注記しています。払う・払わないを最初に決めて書いておくと、あとで揉めません。18歳未満を雇う場合は、働き始めてから15日以内と、辞めてから7日以内に労働監督官へ届け出る義務が加わります。
妊娠・出産にかかわる決まり
旧省令には無く、今回入った項目です。妊娠している人には、22時から6時までの勤務、時間外労働、休日労働をさせられません(39条の1第1項)。出産のための休暇は1回の出産につき98日まで取れ(41条)、そのうち45日分の賃金を雇い主が支払います(59条)。妊娠を理由に辞めさせることも禁じられています(43条)。長く働いてもらうつもりなら、この3点は最初に本人へ伝えておくほうが実務的です。
給料の下限
いちばん大きく変わったのがここです。旧省令のときは最低賃金の条文が家事労働に適用されず、月5,000バーツといった取り決めも成り立っていました。労働省の説明資料は、その具体例を挙げたうえで、2024年4月30日以降は働く地域の最低賃金を下回れないと述べています。
最低賃金は賃金委員会の告示で決まります。官報に載った最新の告示(第14号)は2025年7月1日施行で、地域ごとに1日337〜400バーツの幅があり、バンコクは1日400バーツです。バンコク以外に住んでいる場合は、自分の県の額を告示で確かめてください。
説明資料は、1日8時間を超えて働かせた場合には時間外の手当を請求できる、とも述べています。長時間拘束しておいて月額を低く抑える、という組み方は成り立たなくなったと考えてください。
やってはいけないこと
- 保証金を取る — 法が認める例外に当たらないかぎり、雇い主が働く人から保証金を求めることは禁じられています(10条)。
- 給料から勝手に差し引く — 76条は、税金・労働組合費・協同組合の債務・法定の保証金や本人の同意を得た損害賠償など、限られた場合以外の控除を禁じています。
- タイバーツ以外で払う — 本人の同意がないかぎり、給料はタイの通貨で払う必要があります(54条)。
- 支払いを月1回未満にする — 月給・日給・時給などで計算する場合、月に1回以上払わなければなりません(70条)。
- 男女で額を変える — 同じ内容・同じ質・同じ量の仕事には同じ額を定める必要があります(53条)。
- 性的な言動をする — 雇い主が働く人に性的な嫌がらせをすることは禁じられています(16条)。
支払いが遅れると、遅れている間について年15%の利息が付きます。正当な理由なく故意に払わない場合は、支払期日から7日を過ぎたときから7日ごとに15%の加算金が乗る、と説明資料は整理しています。
辞めてもらうとき
期間を定めていない契約は、書面の予告で終わらせます。予告は給料の支払日か、それより前に相手へ渡し、次の支払日をもって終わりとする形が条文の想定です。3か月を超える予告までは求められません。予告期間分の給料を払って、その日のうちに辞めてもらうこともできます(17条)。
なお、省令15号が家事労働に適用すると並べている条文の一覧に、解雇時の補償金(ค่าชดเชย)の章は入っていません。自分の場合にどう扱われるかは、あとで挙げる労働事務所で確かめてください。
住み込みで雇うとき
住み込みでも、通いでも、適用される条文は同じです。違うのは守りにくさのほうです。生活と仕事の境目が消えるので、1日8時間という枠と、1時間以上の休憩、週1日以上の休みが守られているかを、雇う側が意識して管理する必要があります。「家にいる時間はすべて手が空いている」という前提で頼むと、そのまま時間外労働になります。
住み込みで個人契約にするときは、次の3つを先に紙にしておくと運用が楽になります。ひとつは始まりと終わりの時刻、ふたつめは週のどの曜日を休みにするか、みっつめは年13日以上の祝日をどの日に当てるかです。いずれも法が求めている最低ラインで、決めていなければ「決めていない」ことのほうが問題になります。休みの日に急に頼みごとをする運用を続けると、休日労働の割増(62条)が積み上がります。
部屋と食事を用意する場合も、それを理由に給料から差し引けるとは限りません。76条は控除できる場合を限って並べているので、自分の組み方が当てはまるかどうかは労働事務所に確認してください。住まいそのものの制度や費用については、タイでコンドミニアムを買うときの決まりとお金で別に整理しています。
住み込む人が外国人の場合は、入国管理の届け出が別にあります。入国管理局の案内によれば、外国人を住まわせた家主・住居の所有者・占有者は、その人が住み始めてから24時間以内に、住居のある地域を管轄する入国管理の窓口へ届け出る義務があります(入管法38条)。バンコク市内の住居はチェーンワッタナの入国管理局へ届け出ます。窓口へ持参するほか、書留郵便やインターネットでの届け出も案内されています。
タイ人以外を雇うとき
外国人就労管理の緊急勅令は、許可なく外国人を働かせることを禁じています(9条)。違反すると、外国人1人につき1万バーツから10万バーツの罰金です。繰り返した場合は1年以下の拘禁または1人につき5万〜20万バーツの罰金、もしくはその両方に加えて、判決確定から3年間は外国人を雇えなくなります(102条)。なお同じ条文は、雇った人と同じ家に住んでいる家族を共犯として扱わない旨も定めています。
職業の制限も見ておく必要があります。外国人に禁じる職業を定めた労働省告示は、仕事を4つの表に分けています。第4表は「雇い主がいて、かつタイ政府が外国政府と結んだ取り決め(MOU)にもとづいて入国を許可された外国人」にだけ認められる区分で、そこには力仕事(งานกรรมกร)と店頭での販売が挙がっています。家事そのものを名指しした項目は告示の表にありませんが、自分が頼もうとしている内容がどの区分に当たるかは、雇用局に確かめてから決めてください。
ここでいう許可は働く人側の在留資格・就労許可の話で、雇う側の在留資格とは別の制度です。あなた自身の滞在の枠組みについては、タイの永住権はどういう制度かと移住先の国はどうやって決まるのかを参照してください。
紹介会社や派遣会社を通すとき
人を紹介する事業は、職業紹介・求職者保護法(仏暦2528年)で許可制になっています。国内向けの紹介業の許可を受けた者は、許可証を事務所の見やすい場所に掲示する義務があります(11条)。事務所に行く機会があれば、まずここを見てください。許可を受けずに紹介業を営んだ場合(8条1項違反)には、3年以下の拘禁または6万バーツ以下の罰金、もしくはその両方が定められています。
会社が「紹介」なのか「自社の従業員を出す派遣」なのかで、あなたが雇い主になるかどうかが変わります。契約書のどこにも自分が雇い主だと書いていなくても、給料をあなたが直接払っているなら個人契約です。会社の一覧や選び方は読み物では扱いません。事業者を並べて見るときはタイの人材紹介・採用支援の事業者を見るから確かめてください。
契約書に書いておくこと
省令が定めているのは最低ラインだけで、それより手厚い取り決めをしたときはその取り決めが効く、と説明資料は述べています。裏を返せば、書いていないところは最低ラインで解釈されます。少なくとも次は文字にしておいてください。
- 仕事の範囲(掃除・洗濯・料理・子どもの世話など、頼む項目を並べる)
- 1日の始まりと終わりの時刻、休憩を取る時間帯
- 週の休みをどの曜日にするか
- 年13日以上の祝日をどの日に当てるか
- 給料の額、計算の単位(日か月か)、支払日
- 私用の休暇を有給にするかどうか
- 住み込みの場合、部屋と食事の扱い
- 辞めるときの予告の方法
タイ語と日本語を併記し、双方が1部ずつ持つ形にしておくと、あとで読み合わせができます。
もめたときの持って行き先
給料が払われないなど金銭に関わる争いが起きた場合、働く人は労働監督官に申し立てできます。監督官が事実を調べて命令を出し、その命令に納得できないときは、受け取ってから30日以内に労働裁判所へ訴えることになります。監督官へ申し立てた金額と同じ金額を、同時に裁判所へ訴えることはできません(先に取り下げが必要です)。労働監督官には、働く場所へ立ち入って調べ、雇い主を呼んで説明させ、是正を命じる権限があります。
雇い主の側から見ると、これは「家庭の中だから外から見えない」という前提が成り立たない、ということです。最低ラインを最初に押さえておくのがいちばん安上がりです。
自分で確かめるための窓口
- 労働保護福祉局(กรมสวัสดิการและคุ้มครองแรงงาน) — 149 Mitmaitri Rd., Din Daeng, Bangkok 10400。相談ダイヤルは 1506 の 3 番、または 1546。労働時間・休み・給料・解雇の相談先です。
- 雇用局(กรมการจัดหางาน) — Mitmaitri Rd., Din Daeng, Bangkok 10400。相談ダイヤルは 1506 の 2 番。就労許可と紹介会社の許可はこちらです。
- 入国管理局(สำนักงานตรวจคนเข้าเมือง) — 外国人を住まわせたときの届け出(ตม.30)の窓口です。
金額や施行日は告示の改定で変わります。実際に雇う前に、上の窓口か公式サイトで最新の内容を確かめてください。住む・働く・ビザまわりのほかの話は、住む・働く・ビザの記事一覧にまとめています。
出典
- タイ労働省 労働保護福祉局「คำชี้แจงกระทรวงแรงงาน กฎกระทรวง ฉบับที่ 15 (พ.ศ. 2567)」(家事労働者に関する省令15号の公式説明)(2026-08-31 取得)
- タイ官報(ราชกิจจานุเบกษา)「กฎกระทรวง ฉบับที่ 15 (พ.ศ. 2567) ออกตามความในพระราชบัญญัติคุ้มครองแรงงาน พ.ศ. 2541」第141巻26号ก・21頁(2026-08-31 取得)
- タイ労働省 労働保護福祉局 法務課「พระราชบัญญัติคุ้มครองแรงงาน พ.ศ. 2541(労働者保護法・改正反映版)」(2026-08-31 取得)
- タイ労働省 労働保護福祉局 法務課「กฎหมายคุ้มครองแรงงาน(労働者保護関係法令の一覧)」(2026-08-31 取得)
- タイ官報「ประกาศคณะกรรมการค่าจ้าง เรื่อง อัตราค่าจ้างขั้นต่ำ (ฉบับที่ 14)」第142巻特別236号ง(最低賃金告示)(2026-08-31 取得)
- タイ労働省 労働保護福祉局 法務課「อัตราค่าจ้างขั้นต่ำ (ฉบับที่ 14)(最低賃金告示の施行日の案内)」(2026-08-31 取得)
- タイ政府広報局(กรมประชาสัมพันธ์)「ค่าจ้างขั้นต่ำ 400 บาท/วัน ใน 3 กลุ่ม พื้นที่ กทม.」(2026-08-31 取得)
- タイ雇用局(กรมการจัดหางาน)「พระราชกำหนดการบริหารจัดการการทำงานของคนต่างด้าว พ.ศ. 2560 และที่แก้ไขเพิ่มเติม」(外国人就労管理緊急勅令)(2026-08-31 取得)
- タイ雇用局「ประกาศกระทรวงแรงงาน เรื่อง กำหนดงานที่ห้ามคนต่างด้าวทำ(外国人に禁じる職業の労働省告示)」官報第137巻特別92号ง(2026-08-31 取得)
- タイ雇用局「พระราชบัญญัติจัดหางานและคุ้มครองคนหางาน พ.ศ. 2528 และที่แก้ไขเพิ่มเติม(職業紹介・求職者保護法)」(2026-08-31 取得)
- タイ入国管理局(สำนักงานตรวจคนเข้าเมือง)「การแจ้งที่พักคนต่างด้าว(外国人の宿泊先届け出・ตม.30)」(2026-08-31 取得)
- タイ労働省 労働保護福祉局 公式サイト(所在地と相談ダイヤル)(2026-08-31 取得)
- タイ雇用局 公式サイト(所在地と相談ダイヤル)(2026-08-31 取得)
このページの内容は 2026-08-31 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。