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海外に別荘を持つとき、土地は誰のものになるか

海外で別荘を持つとき、手に入るのは土地の所有権とはかぎりません。タイでは外国人の土地取得が原則できず、例外の条件、借りて建てる形、相続、ビザとの関係、日本側で必要になる調書と税までを、公式の情報だけで整理しました。

この記事の要点

  • タイでは外国人が土地を持てないのが原則です。例外は4,000万バーツ以上を投資した人が1ライ(1,600平方メートル)以下を住まいとして取得する形で、買うときも売るときも内務大臣の許可が要ります。
  • 土地を借りて建てるなら、登記があるかどうかが分かれ目です。3年を超える賃貸は土地事務所で登記しないと、契約書に10年や20年と書いてあっても3年ぶんしか効きません。
  • 別荘を買っても、その国にいられる期間は増えません。タイでは滞在の長さはビザの側で決まり、不動産はLTRビザの投資の要件を満たす手段のひとつとして挙げられています。
  • 日本側では、12月31日時点で国外財産の合計が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年の6月30日までに国外財産調書を税務署へ出さなければなりません。
  • 売るときに、自宅を売ったときの3,000万円の特別控除は使えません。趣味や保養のために持つ家屋は対象外だと国税庁が示しています。日本に住所がある相続人が受け取るなら、国外の別荘も相続税の対象です。

海外に別荘を持ちたいと考えるとき、多くの人は日本と同じように「土地と建物を買う」姿を思い浮かべます。ところが国境をまたいだ瞬間に、そもそも外国人がその国の土地を持てるのかという問いが先に立ちます。持てる国、条件つきで持てる国、原則として持てない国があり、持てない国では「建物の一部を持つ」「使う権利を年数つきで借りる」という別の形に置き換わります。このページは、その形の違いと、タイを例にした具体的な条件、そして日本側で発生する届出と税を、公式の情報だけで整理した読み物です。どの物件がよいかという評価は扱いません。

手に入るものは、大きく3つの形に分かれます

  • 土地ごと持つ — 土地にも建物にも自分の名義が付く形です。日本で別荘を買うときの感覚に近いですが、外国人にこれを認めていない国があります。
  • 建物の一部を持つ — 集合住宅の一室だけを持つ形です。土地は建物の所有者全員の共有になるため、土地の所有制限とは別の枠組みで扱われます。
  • 使う権利を年数つきで借りる — 土地の所有者は別にいて、自分は決められた年数だけ使う権利を登記します。年数が切れたときにどうなるかが、そのまま資産の価値になります。

どの形が選べるかは、その国の法律で決まっています。売り手の説明や契約書の書きぶりで動くものではありません。国ごとの違いをどの順番で調べるかは移住する国をどう選ぶかでも触れています。

タイでは、外国人が土地を持てないのが原則です

ジェトロ(日本貿易振興機構)はタイの外資規制の説明で、「原則として、外国人(法人も含む)は土地を取得できない」と明記しています。そのうえで例外に触れており、1999年5月の改正土地法により、4,000万バーツ以上を投資した場合に1ライ(1,600平方メートル)以下の土地を取得できるようになった、としています。

つまりタイで「土地付きの別荘を外国人名義で買う」は、一般的な買い物ではなく、限られた例外の手続きに乗ることを意味します。

例外として認められている条件

タイ土地局は、この例外を「土地法96条の2(มาตรา 96 ทวิ)にもとづく外国人の居住用土地の取得」という手続きとして公開しています。タイ政府の行政手続き案内に載っている条件は、次のとおりです。

  • 取得する側が、4,000万バーツ以上をタイに投資した外国人であること(投資の対象になる事業の種類は別に定めがあります)
  • 居住用として取得できるのは1ライまで
  • その土地がパタヤ市の区域、自治体の区域、または都市計画で住宅地と定められた区域の中にあること
  • その土地が軍の安全区域の外にあること
  • 内務大臣の許可を受けてはじめて権利の登記ができること
  • 取得したあとに売るときも、あらためて大臣の許可が必要になること

金額の大きさより、最後の2つが効いてきます。買うときにも売るときにも役所の許可が挟まるので、「気が変わったら売ればいい」という前提が置けません。別荘は使わなくなる日がいつか来る資産なので、出口が自分の判断だけで閉じられないことは、買う前に織り込んでおく必要があります。

土地を借りて家を建てる形は、登記があるかどうかで決まります

土地を持てないなら借りればよい、という発想は自然です。実際、タイでは土地を借りてその上に家を建てる形が取られます。ただしここには落とし穴があります。

タイ土地局のお知らせは、土地の賃貸借について次のように案内しています。「เช่าไม่เกิน 3 ปี(3年以下の賃貸借)」は書面の契約だけで足りますが、「เช่าเกิน 3 ปี(3年を超える賃貸借)」は土地事務所で登記しなければなりません。そして登記しなかった場合、契約書に10年や20年と書いてあっても、法律上は3年ぶんしか効力を持ちません

借地の上に別荘を建てるなら、この登記が実質的な安全装置です。確かめるのは契約書の年数ではなく、土地の権利証にその登記が入っているかどうかです。契約書だけを見て安心しないでください。

建物の部屋を買うときは、別の法律の話になります

土地の制限を避ける形として、建物の一室を買う方法があります。こちらは土地法ではなく区分所有建物の法律が働き、建物ごとに外国人が持てる面積の上限があること、代金を国外から外貨で送った証明が登記の条件になることなど、まったく別の条件が並びます。かかる費用と手続きはタイでコンドミニアムを買うときの決まりとお金にまとめました。

ただし、庭のある一戸建てを思い描いて別荘を探している人にとって、部屋を買う形は同じ体験にはなりません。「持てる形」と「欲しい形」が一致しないことは、海外で別荘を考えるときにいちばん最初に突き当たる壁です。

相続で引き継ぐときにも許可が要ります

別荘は、持ち主より長く残ることがあります。タイ政府の行政手続き案内には、外国人が法定相続人として土地を相続する手続き(土地法93条)も載っています。そこに書かれている条件は次のようなものです。

  • 相続する土地は、すでに持っている土地と合わせて認められる上限の中に収まる必要があります(居住用は1ライ)
  • 上限を超える分は、定められた期間内に処分しなければなりません
  • 相続したあとに売るときも、大臣の許可が必要です
  • 申請は土地の所在地の土地事務所に出し、処理には2か月ほどかかるとされています

「家族に残す」つもりで買うのであれば、残された側が許可の申請をすることになります。相続人がタイ語も現地の手続きも分からない状態で放り出されないよう、権利の形と書類の置き場所は生きているうちに共有しておくのが現実的です。

別荘を買っても、滞在できる期間は増えません

不動産を持つことと、その国に長くいられることは別の制度です。タイの場合、長期滞在の入口はビザの側にあります。

  • Non-Immigrant Visa "O-A" — タイ外務省の公式ページによると、申請日時点で50歳以上であること、80万バーツ以上の預金または月6万5,000バーツ以上の収入(もしくは合わせて80万バーツ以上)が条件です。査証料はマルチプルで5,000バーツと記載されています。
  • LTR(長期居住者)ビザ — タイ投資委員会(BOI)の公式サイトでは4つの区分が示されています。たとえば富裕層向けの区分は全世界の資産100万米ドル以上かつタイへの投資50万米ドル以上、年金生活者向けの区分は年8万米ドルの不労所得(年4万〜8万米ドルの場合は25万米ドルの追加投資)とされています。いずれも5万米ドル以上の医療保険または10万米ドルの預金残高が要り、滞在は5年で5年の延長ができ、90日ごとの報告が1年ごとの報告になります。
  • Thailand Privilege — 公式サイトの会員種別では、ブロンズが65万バーツで5年、ゴールドが90万バーツで5年、プラチナが150万バーツで10年、ダイヤモンドが250万バーツで15年、リザーブが500万バーツで20年と表示されています。

ここで注意したいのは、LTRの富裕層区分と年金生活者区分ではタイの不動産への投資が投資要件のひとつとして認められている点です。別荘を買ったからビザが出るのではなく、ビザの投資要件を満たす手段のひとつに不動産が入っている、という順番です。金額や条件は改定されるので、申請する前に必ず各公式サイトで見直してください。

留守にしている間、家は誰が見るのか

別荘の維持費は、買値の話が終わったあとに毎年ついてきます。使っていない月でも、電気・水道の基本料金、共用部の管理費、庭とプールの手入れ、防犯、そして毎年の税が動き続けます。熱帯では建物の傷みも早く、締め切った家はカビと虫の被害を受けやすくなります。

そこで「誰かに見てもらう」話になりますが、人を雇うなら雇用の決まりが付いてきます。賃金、休日、社会保険の扱い、外国人が雇い主になるときの注意点はタイでメイドを雇うときの決まりと給料にまとめています。「知り合いに鍵を預けておく」で始めて、あとから雇用として整理し直すより、最初から形を決めておくほうが安全です。

なお、使っていない期間に旅行者へ短く貸し出すことを考える人がいますが、宿泊を業として提供する行為には別の許可制度があります。管理規約で禁じられている建物もあります。貸し出しを前提に採算を組むなら、購入を決める前に許可の要否を確認してください。

会社を作って持たせる形について

「タイに会社を作って、その会社の名義で土地を持てばよい」という話を聞くことがあります。ただしジェトロが示すとおり、外国人による土地取得は原則として認められておらず、外資比率が50%以上の企業には業種ごとの規制もかかります。土地を持つためだけに形式的な株主を並べる形は、制度が想定しているものではありません。

タイで会社を設立すること自体は正規の手続きです。事業としてタイに拠点を作り、その延長で不動産を扱いたいのであれば、設立の代行を頼む先をタイでの会社設立を代行する事業者を見るから探せます。ただし別荘を持つ手段として会社を使えるかどうかは、必ずタイの弁護士など専門家に直接確認してください。

日本側でも、やることが出てきます

海外に別荘を持つと、日本の税務でいくつか義務が生まれます。金額の線引きがはっきりしているので、買う前に自分が該当するか確かめておくと後で慌てません。

年末に5,000万円を超えていたら調書が要ります

国税庁のタックスアンサーによると、その年の12月31日時点で国外財産の合計額が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年の6月30日までに国外財産調書を税務署へ提出しなければなりません。期限内に提出していれば、その財産に関する申告漏れがあったときの過少申告加算税等が5%軽減されます。逆に期限内に提出がない場合や記載すべき財産の記載がない場合は5%加重されます。偽りの記載や期限内の未提出には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という定めもあります。

所得と財産が大きい人には、もう一つの調書があります

財産債務調書は、その年分の各種所得金額の合計額(退職所得を除く)が2,000万円を超え、かつ12月31日時点で3億円以上の財産または1億円以上の有価証券等を持つ人が対象です。これに当たらなくても、12月31日時点で10億円以上の財産を持つ居住者は提出が必要です。期限は同じく翌年6月30日です。

売るときに、自宅を売ったときの控除は使えません

ここは見落としやすいところです。国税庁の説明では、居住用財産を売ったときの3,000万円の特別控除について、適用を受けられない家屋として「別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋」が挙げられています。つまり別荘として持っていた家を売っても、この特例は使えません。海外の別荘を売って利益が出たときの税額は、自宅を売る場合とは別に計算することになります。

相続税は、国外の別荘にもかかります

国税庁の説明によると、相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある相続人は、取得したすべての財産が相続税の対象になります。国外にある財産も含まれます。海外に置いたからといって、日本の相続税の外に出るわけではありません。日本に住所がない相続人については、日本国籍の有無や過去10年以内に日本に住所があったかどうかで課税される範囲が変わります。

買うと決める前に確かめておくこと

ここまでを、買う前の確認事項としてまとめます。

確かめることどこで確かめるか
自分の名義になるのは土地か、建物か、使う権利かその国の土地関係の役所(タイなら土地局)の手続き案内
権利の年数と、切れたあとにどうなるか登記の内容そのもの。契約書の年数ではなく登記を見る
買うとき・売るときに役所の許可が要るか行政手続きの案内ページ
相続するときに誰が何を申請するか同じく行政手続きの案内ページ
使わない期間の維持費と、人を頼む場合の雇用の形管理組合の規約、現地の労働の決まり
日本側の調書と税の該当有無国税庁のタックスアンサー、税務署

この記事に載せた条件と金額は、2026-08-31に公式の情報で確かめたものです。制度も金額も改定されるので、実際に動く前にそれぞれの公式サイトで見直してください。タイで暮らす・働く・ビザを取るまわりの記事は住む・働く・ビザの記事一覧から辿れます。

出典

このページの内容は 2026-08-31 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。