バンコクの正式名称、読み方と意味
バンコクの正式名称はタイ語で8つの区切りからなる長い名前です。ラーマ1世が付けた全文と公式の読み、区切りごとの意味、ラーマ4世が書き換えた1語、公文書での英語表記までを、タイ政府とギネス世界記録の公式資料だけで整理しました。
この記事の要点
- バンコクの正式名称は、クルンテープ・マハーナコーンで始まる8つの区切りが連なる長い名前で、ラーマ1世が新しい王都に与えたものです。
- その中身は住所ではなく都をたたえる文章で、神々の都、九つの宝玉によって荘厳な地、国王がお住まいになる地、神が築いた宮殿になぞらえた都、と言い連ねたものです。
- ギネス世界記録は世界一長い地名としてバンコクを載せ、その長さを168文字としています。ただしラテン文字への直し方が資料によって違い、タイ王立学士院事務局の表記で数えると169文字になります。
- ふだん書く「กรุงเทพฯ」は省略形ですが、読むときは省略せずクルンテープ・マハーナコーンと全部読むと、王立学士院事務局の規則で定められています。
- 英語表記は、官報に載る首相府告示の一覧で Krung Thep Maha Nakhon が先に置かれ、Bangkok が括弧に入って併記されています。Bangkok が使えなくなったわけではありません。
タイの首都を、タイ語ではกรุงเทพมหานคร(クルンテープ・マハーナコーン)と呼びます。ところがこれ自体が、もっと長い名前を途中で切ったものです。正式な名称は8つの区切りが連なっていて、タイ王立学士院事務局(สำนักงานราชบัณฑิตยสภา)が全文・読み方・ラテン文字表記・意味をそろえて公開しています。
このページでは、その全文をまず書き出し、区切りごとに何と言っているのかを追い、誰がいつ付けたのか、途中で一語だけ書き換えられたのはなぜか、そして公文書で英語表記をどうするのかまでを、タイ政府の資料とギネス世界記録の公式ページだけをもとに整理しました。
正式名称をそのまま書き出す
タイ王立学士院事務局が示している全文は、次のとおりです。
กรุงเทพมหานคร อมรรัตนโกสินทร์ มหินทรายุธยา มหาดิลกภพ นพรัตนราชธานีบูรีรมย์ อุดมราชนิเวศน์มหาสถาน อมรพิมานอวตารสถิต สักกะทัตติยวิษณุกรรมประสิทธิ์
タイ語では単語のあいだに空白を入れないのがふつうですが、この名前は8つの区切りに分けて書かれます。同事務局は、それぞれの区切りについて「タイ語での正しい読み」と「ラテン文字への転写」も併せて示しています。
| 区切り | タイ語表記 | タイ語での読み | ラテン文字表記 |
|---|---|---|---|
| 1 | กรุงเทพมหานคร | กฺรุงเทบมะหานะคอน | KRUNGTHEPMAHANAKHON |
| 2 | อมรรัตนโกสินทร์ | อะมอนรัดตะนะโกสิน | AMONRATTANAKOSIN |
| 3 | มหินทรายุธยา | มะหินทะรายุดทะยา | MAHINTHARAYUTTHAYA |
| 4 | มหาดิลกภพ | มะหาดิหฺลกพบ | MAHADILOKPHOP |
| 5 | นพรัตนราชธานีบูรีรมย์ | นบพะรัดราดชะทานีบูรีรม | NOPPHARATRATCHATHANIBURIROM |
| 6 | อุดมราชนิเวศน์มหาสถาน | อุดมราดชะนิเวดมะหาสะถาน | UDOMRATCHANIWETMAHASATHAN |
| 7 | อมรพิมานอวตารสถิต | อะมอนพิมานอะวะตานสะถิด | AMONPHIMANAWATANSATHIT |
| 8 | สักกะทัตติยวิษณุกรรมประสิทธิ์ | สักกะทัดติยะวิดสะนุกำปฺระสิด | SAKKATHATTIYAWITSANUKAMPRASIT |
日本語話者が声に出すときの目安を並べると、クルンテープ・マハーナコーン/アモーンラッタナコーシン/マヒンタラーユッタヤー/マハーディロックポップ/ノッパラットラーチャターニーブーリーロム/ウドムラーチャニウェートマハーサターン/アモーンピマーンアワターンサティット/サッカタットティヤウィサヌカムプラシット、といったところです。ただしカタカナは近似にすぎません。正確な音は、上の表の「タイ語での読み」の欄が基準になります。
ひと区切りずつ、何と言っているのか
同事務局は、8つの区切りを3つのまとまりに束ねて意味を説明しています。タイ語の説明と、あわせて示されている英語訳を並べます。
| まとまり | タイ語での説明 | 意味 |
|---|---|---|
| กรุงเทพมหานคร อมรรัตนโกสินทร์ มหินทรายุธยา | เมืองของเทวดา มหานครอันเป็นอมตะ | 神々の都、不滅の大都市(英訳は City of Angels Great City of Immortals) |
| มหาดิลกภพ นพรัตนราชธานีบูรีรมย์ | สง่างามด้วยแก้ว ๙ ประการ และเป็นที่ประทับของพระเจ้าแผ่นดิน | 九つの宝玉によって荘厳であり、国王がお住まいになる地(英訳は Magnificient City of the Nine Gems Seat of the King) |
| อุดมราชนิเวศน์มหาสถาน อมรพิมานอวตารสถิต สักกะทัตติยวิษณุกรรมประสิทธิ์ | เมืองที่มีพระราชวังหลายแห่ง ดุจเป็นวิมานของเทวดา ซึ่งมีพระวิษณุกรรมสร้างขึ้นตามบัญชาของพระอินทร์ | いくつもの王宮を持ち、神々の天上の宮殿のようであり、インドラ神の命によりウィッサヌカム神が築いた都(英訳は City of Royal Palaces Home of Gods Incarnate Erected by Visvakarman at Indra's Behest) |
つまりこの名前は、住所というより都をたたえる文章です。神々の都であること、九つの宝玉に象徴される荘厳さ、国王の在所であること、そして神が築いた宮殿になぞらえること。これらを順に言い連ねた結果が、あの長さになっています。
「นพรัตน(九つの宝玉)」のように、タイでは色や数に意味を持たせた表現がよく出てきます。国の象徴に同じ発想が働いている例はタイの国旗の三色が意味するものにまとめました。
ふだん使う「กรุงเทพฯ」も略した形
タイの人が日常で書くのはกรุงเทพฯです。最後に付いている「ฯ」はไปยาลน้อย(パイヤーン・ノーイ)という省略記号で、タイ王立学士院事務局の表記規則では「よく知られた語の後半を省き、前半だけを残して意味が通じるようにするときに使う」と定められています。同事務局が挙げている最初の例が、まさに「กรุงเทพมหานคร を กรุงเทพฯ と書く」というものです。
大事なのは読み方です。同事務局の読み方の規則では、ไปยาลน้อย が付いた語は省略せずに全部読むと定められており、กรุงเทพฯ の読みは กฺรุง-เทบ-มะ-หา-นะ-คอน(クルン・テープ・マハー・ナコーン)と明記されています。書くときは短く、読むときは長く、というわけです。
整理すると、名前には少なくとも3つの層があります。
- กรุงเทพฯ — 書くときの日常的な省略形。読むときは กรุงเทพมหานคร と読む
- กรุงเทพมหานคร — 首都の名として、また行政組織の名として使われる正式な呼び名
- กรุงเทพมหานคร อมรรัตนโกสินทร์ …(8区切りの全文) — 建都の際に与えられた完全な名称
「バンコクの正式名称」を聞かれたときにどれを指すかは、場面によって変わります。役所の書類で求められるのは2番目、記録として長さが話題になるのは3番目です。
この名前を付けたのは誰か
タイ王立学士院事務局によれば、この名はラーマ1世(プッタヨートファーチュラーローク大王)が新しい王都に与えたもので、『พระราชพงศาวดารกรุงรัตนโกสินทร์ ฉบับหอสมุดแห่งชาติ(国立図書館本 ラッタナコーシン朝年代記)』に記されている、と説明されています。
時期については、同事務局の別の解説が経緯を追っています。ラーマ1世はチャクリー王朝の初代国王として即位したのち新しい都を築かせ、仏暦2328年にพระราชพิธีสมโภชพระนคร(都の落成を祝う王室儀礼)を執り行って、そのときに新しい王都の名を授けた、とされています。タイの公文書は西暦ではなく仏暦を使い、仏暦から543を引くとおおよその西暦になります。
建都そのものの日付は、バンコク都(กรุงเทพมหานคร)自身が公式サイトで示しています。仏暦2325年(1782年)4月21日に首都として建てられたとあり、その理由として、旧都トンブリーが手狭で兵法にかなわないとラーマ1世が考えたためだ、と書かれています。
なお同事務局は、この都にはกรุงรัตนโกสินทร์(クルン・ラッタナコーシン)という別の呼び名もある、とも記しています。歴史の文脈で「ラッタナコーシン朝」「ラッタナコーシン島」といった言い方が出てくるのは、この呼び名に由来します。
ラーマ4世が一語だけ書き換えた
古い資料を見ると、2番目の区切りがบวรรัตนโกสินทร์(ボーウォーンラッタナコーシン)になっているものがあります。誤記ではありません。
タイ王立学士院事務局は、ラーマ1世が与えた当初の名は「กรุงเทพมหานคร บวรรัตนโกสินทร์ มหินทรายุธยา …」であり、ラーマ4世(モンクット王)の御代に「บวรรัตนโกสินทร์」を「อมรรัตนโกสินทร์」に改めさせたと明記しています。書き換わったのは頭の一語で、บวร(優れた・尊い)が อมร(不滅の)に替わりました。
いま正式名称として通用しているのは、この書き換え後の形です。手元の資料でどちらの語が使われているかを見れば、その資料がどの段階の名前を写しているのかが分かります。
世界一長い地名として記録されている
ギネス世界記録の公式サイトには「Longest place name(最も長い地名)」という記録項目があり、記録保持者はタイのバンコクとされています。同ページは正式名称をラテン文字で切れ目なくつなげた形で示し、その長さを168文字と記しています。あわせて「公式の短い形」を111文字として挙げています。
ただし、ここは数字が一人歩きしやすいところなので、ひとこと添えておきます。ラテン文字への直し方が資料によって違うため、文字数も一致しません。ギネス世界記録のページに載っている綴りと、タイ王立学士院事務局が示すラテン文字表記を、それぞれ空白を除いてつなげて数えると、次のようになります。
| 綴りの出どころ | 空白を除いた文字数 | 違いが出る箇所 |
|---|---|---|
| ギネス世界記録の記録ページ | 168 | mahintharaayuthaya/amonpimana… |
| タイ王立学士院事務局のラテン文字表記 | 169 | mahintharayutthaya/amonphimana… |
数え方が違うのではなく、3番目の区切り มหินทรายุธยา と7番目の อมรพิมานอวตารสถิต の綴り方が違うために1文字ずれます。タイ文字そのものは同じです。「バンコクの正式名称は何文字か」という問いに世の中の答えがそろわないのは、たいていこれが理由です。数字を引用するときは、どの綴りを数えたものかも一緒に控えておくと確実です。
英語で書くときは Krung Thep Maha Nakhon か Bangkok か
これは制度としてはっきり決まっています。タイの官報(ราชกิจจานุเบกษา)第139巻 特別号205 ง に、首相府告示「国名・領域・行政区・首都の名称の定め」が掲載されています。
- タイ王立学士院事務局が仏暦2565年(2022年)6月29日付で名称一覧の告示を作成しました。この告示の本文は、王立学士院総裁スラポン・ウィルンラック名誉教授の名で出されています。
- 閣議が同年8月16日に、この一覧を「官庁が同一の基準として遵守するため」用いることを承認しました。
- これを受けて同年8月30日付で首相府告示が出され、仏暦2544年(2001年)11月9日付の旧告示は廃止されました。官報への掲載は同年9月1日です。
その一覧のタイの項は、次のように書かれています。
| ประเทศ(国) | เมืองหลวง(首都) |
|---|---|
| Thailand : Kingdom of Thailand | Krung Thep Maha Nakhon (Bangkok) |
| ไทย : ราชอาณาจักรไทย | กรุงเทพมหานคร |
つまり、先に置かれているのが Krung Thep Maha Nakhon で、Bangkok は括弧に入って併記されています。Bangkok が使えなくなったわけではなく、公的な一覧の中に両方が残っている、というのが実際のところです。2026-09-01の時点で有効なのはこの告示です。
日常では、タイの人も外国人も Bangkok を使い続けていますし、空港コードもBKKのままです。書類で迷ったときは、提出先が指定する書式に従うのが確実です。
กรุงเทพมหานคร は街の名前であり役所の名前でもある
タイ語で กรุงเทพมหานคร と言うとき、都市そのものを指す場合と、その都市を運営する行政組織(日本語では「バンコク都」と訳されます)を指す場合があります。タイ王立学士院事務局の解説も、กรุงเทพมหานคร は行政組織の名称でもあり、行政・保健衛生・教育などを所管する、と説明しています。
この二重の意味は、比較的新しい経緯から生まれています。バンコク都が公式サイトで示している沿革を追うと、次の順序になります。
- 仏暦2480年(1937年)4月1日 — 「เทศบาลนครกรุงเทพ(バンコク市)」が設置されます。当時は隣にトンブリーの市が別に存在していました。
- 仏暦2514年(1971年)12月21日 — 布告第24号・第25号により、プラナコーン県とトンブリー県が統合され「ナコーンルアン・クルンテープトンブリー県」になります。
- 仏暦2515年(1972年)12月13日 — 布告第335号により、県・自治体・衛生区といった重なり合っていた組織を一本化し、単一の行政単位「กรุงเทพมหานคร」とされました。今の名前で呼ばれるようになったのはこの時点です。
- 仏暦2518年(1975年)2月14日 — バンコク都行政組織法が施行され、区(เขต)と町(แขวง)に区分されました。
- 仏暦2528年(1985年)8月20日 — 現行のバンコク都行政組織法が施行され、選挙で選ばれるのは知事のみ、副知事4名は知事が任命する形になりました。
現在のバンコク都は50の区役所を持ち、それらを6つのグループに分けて扱っています。「バンコクの正式名称」を調べていて กรุงเทพมหานคร が役所の名前として出てくるのは、こうした経緯があるためです。
名前をたどると見えてくるもの
この名前を読み解くと、神々の都、九つの宝玉、王宮、そして神が築いた宮殿という言葉が並びます。どれもタイの人が国や王室を語るときに使ってきた語彙で、名前そのものが当時の世界観の要約になっています。
名前に神仏の語が重ねられている背景を知りたい方はタイの仏像についてが近い話題です。形や色に決まりごとを持たせるという同じ発想は衣装にも表れていて、そちらはタイの民族衣装についてにまとめました。国旗の三色の由来はタイの国旗の三色が意味するもので扱っています。
タイという国の成り立ちや文化に関する記事はタイという国を知るからたどれます。表記や読みの細かな点をご自身で確かめたいときは、タイ王立学士院事務局の公開資料と、バンコク都の公式サイトで最新の内容をご確認ください。
出典
- タイ王立学士院事務局(สำนักงานราชบัณฑิตยสภา)「กรุงเทพมหานคร」— 正式名称の全文・公式の読み・ラテン文字表記・区切りごとの意味(2026-09-01 取得)
- タイ王立学士院事務局(สำนักงานราชบัณฑิตยสภา)「กรุงเทพมหานคร(๑๗ กุมภาพันธ์ ๒๕๕๒)」— 建都の経緯と命名の時期、行政としての沿革(2026-09-01 取得)
- タイ王立学士院事務局「ไปยาลน้อย(省略記号 ฯ の使い方)」(2026-09-01 取得)
- タイ王立学士院事務局「การอ่านเครื่องหมายไปยาลน้อย(ฯ の読み方)」— กรุงเทพฯ の正式な読み(2026-09-01 取得)
- Guinness World Records 公式「Longest place name」(最も長い地名の記録)(2026-09-01 取得)
- タイ官報(ราชกิจจานุเบกษา 第139巻 特別号205 ง)首相府告示「国名・領域・行政区・首都の名称の定め」— タイ保健省疾病管理局が掲載する官報PDF(2026-09-01 取得)
- タイ保健省保健事業支援局 国際保健課「สำนักงานราชบัณฑิตยสภา 告示(仏暦2565年6月29日付)」本文(2026-09-01 取得)
- バンコク都(กรุงเทพมหานคร)公式サイト「เกี่ยวกับองค์กร — ประวัติการก่อตั้งกรุงเทพมหานคร」(建都と行政組織の沿革・区の数)(2026-09-01 取得)
- バンコク都(กรุงเทพมหานคร)公式サイト(2026-09-01 取得)
このページの内容は 2026-09-01 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。