BOIの恩典と会社設立の数字 — 免税年数・審査日数・手数料
BOIの区分ごとの法人所得税の免除年数、申請の基準と審査日数、外国人の受け入れと土地所有の条件、そしてBOIを取らない場合の登記手数料・発起人の人数・外国人事業法の最低資本金・税率を、公式資料から並べました。
この記事の要点
- 法人所得税の免除は区分で決まります。A1+が10〜13年(上限なし)、A1が8年(上限なし)、A2が8年、A3が5年、A4が3年、Bは無し。加算を入れると最長13年です。「上限なし」と「投資額の100%まで」の違いが、利益が大きいほど効きます。
- 審査は投資額で日数が変わります。2億バーツ以下で40営業日、20億以下で60営業日、20億超で90営業日。いずれも書類が揃ってからです。
- 外国人の受け入れに法定の上限はありません。BOIが案件ごとに承認します。ただし2025年10月から、製造業で従業員100人超のプロジェクトはタイ人が70%超でなければなりません。最低給与は役員が月150,000バーツ以上、管理職・技術者が75,000バーツ以上(当該分野の学士以上なら50,000バーツ以上)です。
- 土地の所有は払込資本金5,000万バーツ以上が条件で、事務所用は5ライ、現業労働者の住宅用は20ライまで(告示16/2567)。よく見る「役員住宅10ライ」はこの告示にありません。
- BOIを取らない場合、会社の設立登記は5,000バーツ、定款が500バーツで、窓口なら1時間25分です。発起人は2人以上(2023年2月7日施行)。BOI自身のガイドは3人と書いている箇所があり、同じ資料の中で矛盾しています。
- 税は法人所得税20%、中小企業(払込資本500万以下かつ売上3,000万以下)は30万まで免税・30万〜300万が15%。VATは7%で2027年9月30日まで延長済み、年間売上180万バーツ超で30日以内に登録が要ります。
タイで会社を作る話をすると、必ず「BOI が取れるか」が出てきます。何年まで税が免除され、いくら投資が要り、審査に何日かかり、外国人を何人働かせられるのか。ここでは BOI 自身が公表している数字を並べます。取れるかどうかの判定はしません。
恩典は、事業の区分で決まります
BOI(Office of the Board of Investment = タイ投資委員会事務局)は、奨励する事業を A1+ / A1 / A2 / A3 / A4 / B の6区分に分け、法人所得税の免除年数を変えています。
| 区分 | 基本の免除 | 加算 | 合計 |
|---|---|---|---|
| A1+ | 10〜13年(上限なし) | 1〜3年 | 11〜13年(上限なし) |
| A1 | 8年(上限なし) | 1〜5年 | 9〜13年(上限なし) |
| A2 | 8年 | 1〜5年 | 9〜13年 |
| A3 | 5年 | 1〜5年 | 6〜10年 |
| A4 | 3年 | 1〜5年 | 4〜8年 |
| B | なし | 1〜5年 | 1〜5年 |
「上限なし」の意味が効きます。免除には2つの形があります。
- 上限なし(A1+・A1)——期間中、奨励事業の利益に対する法人所得税が金額の制限なく全額免除される
- 上限あり(A2〜A4)——免除されるのはそのプロジェクトの投資額の100%まで
つまり A2 と A1 は「8年」で同じでも、利益が大きいほど差が開きます。
加算は投資や支出の割合で決まります。
| 研究開発などへの投資・支出 | 加算 |
|---|---|
| 売上の 1% または 2億バーツ | +1年 |
| 2% または 4億バーツ | +2年 |
| 3% または 6億バーツ | +3年 |
| 4% または 8億バーツ | +4年 |
| 5% または 10億バーツ | +5年 |
加算後の合計は最長8年まで、ただし A1+・A1・A2 だけは最長13年まで伸ばせます。根拠は BOI 告示 10/2565(2022年12月8日)です。
「B1」「B2」という区分は、現行のガイドにはありません。以前のガイドには B1・B2 がありましたが、いまは B の1つです。古い解説を読むときに注意してください。
税以外の恩典
BOI は税だけの制度ではありません。公式の逐語です。
Permit to own land, Permit to bring into the Kingdom skilled workers and experts to work in investment promoted activities, Permit for foreign nationals to enter the Kingdom for the purpose of studying investment opportunities, Permit to take out or remit money abroad in foreign currency
土地の所有、技能者・専門家の受け入れ、投資機会の調査のための入国、外貨での送金です。タイでは外国人・外資による土地所有と就労に制限があるので、ここが会社の作り方そのものを変えます。
どんな事業が対象か
ガイドは奨励対象を4つの大分類に分けています。
| 大分類 | 含まれるもの |
|---|---|
| BCG 産業 | 農業・食品(上流農業、加工農産物、先端農業、支援産業)、バイオ技術、医療(医療機器・原薬・医薬品、専門医療センター、臨床研究) |
| 先端製造業 | 機械・自動化、自動車(BEV・PHEV・HEV、充電・電池交換ステーション、造船、鉄道車両)、宇宙・航空、防衛、電機・電子 |
| 基礎・支援産業 | 鉱物、素材、鉄鋼、化学・石油化学・プラスチック、公益事業と環境、工業用不動産、EV 電池の管理 |
| デジタル・創造産業・高付加価値サービス | 低所得者向け住宅、デジタル、スマートシティ、軽工業、映画、専門サービス(研究開発、エンジニアリング設計、試験所、校正、滅菌、人材育成)、観光 |
グループ B の代表格は、貿易投資支援事務所(TISO)と国際事業センター(IBC)です。TISO には「年間の販売費・一般管理費が1,000万バーツ以上」「機械の輸入関税免除は対象外」という条件が付いています。
申請の基準 — ここで落ちます
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 付加価値 | 収入の 20%以上。ただし農業・農産物、電子製品と部品、コイルセンターは 10%以上 |
| 最低投資額 | 100万バーツ(土地代と運転資金を除く)。業種別に別途定めがある場合を除く |
| 負債資本比率 | 新設は 3対1 を超えない。拡張は個別判断 |
| 事業計画書 | 投資額 20億バーツ超は実現可能性調査の提出が必要 |
| 機械 | 新品が原則。輸入中古は製造年から5年以内、5〜10年は性能証明書が要る。工場移転の場合は10年超も可(機械価額の50%を投資額に算入) |
| 金属溶解 | ISO 14000 かそれと同等の認証が、免税を使う前に必要 |
外資比率の基準もあります——外国人事業法のリスト1の事業はタイ人が登録資本の51%以上を持つこと。リスト2・リスト3の事業は外資比率の制限なし(他の法律に定めがある場合を除く)。
審査にかかる日数
| 投資額 | 審査 |
|---|---|
| 2億バーツ以下 | ワーキンググループが 40営業日以内 |
| 20億バーツ以下 | 小委員会が 60営業日以内 |
| 20億バーツ超 | 小委員会と委員会が 90営業日以内 |
いずれも書類が揃ってからの日数です。前後の期限も決まっています。
- 提出から 10営業日以内に、担当者がプレゼンの日程を連絡する
- 決議の証明日から 7日以内に結果が申請者へ届く
- 通知から 1か月以内に奨励を受諾する
- 受諾から 6か月以内に奨励証明書の申請書を出す。BOI は書類が揃ってから 10営業日以内に証明書を発行する
外国人を働かせる — 人数の上限は法律にありません
投資奨励法 第25条は、技能者・専門家・その家族について「委員会が適当と認める人数と期間で、入管法の枠や期間を超えても」入国を認めるとしています。固定の上限はなく、BOI が案件ごとにポジションを承認する仕組みです。
手続きは Single Window で、それぞれ日数が決まっています。
| 手続き | 日数 |
|---|---|
| 外国人のポジションの承認申請 | 5営業日 |
| 本人と家族のビザ発給の申請 | 3日 |
| 承認されたポジションへの配置 | 3日 |
| 期間の延長 | 3日 |
| ビザと就労許可の取消し | 即時 |
承認されるポジションの期間は事業で違います——2年(製造業とサービス業の多く、ITC・IBC・IHQ)、4年(研究開発、対象技術開発、電子設計、科学技術の研究職)、1年(TISO、IBPO)。臨時のポジションは1回につき最長6か月で、延長は1回だけです。20人を超える場合は受け入れ計画の添付が要ります。
最低給与の条件も公表されています。
| 区分 | 月額 |
|---|---|
| 役員 | 150,000 バーツ以上 |
| 管理職、技術者、科学者・研究者、IT 専門家 | 75,000 バーツ以上(当該分野の学士以上なら 50,000 バーツ以上) |
| 技能労働者・技師・サービス職 | 50,000 バーツ以上(IBPO 等の作業者は 35,000 バーツ以上) |
2025年10月から、タイ人の雇用比率に新しい条件が加わりました。製造業のプロジェクトで常勤の従業員(タイ人・外国人の合計)が100人を超える場合、タイ人が総従業員の70%超でなければなりません。適用は、告示日より後に奨励証明書を出したプロジェクトが 2025年10月1日から、それ以前のプロジェクトが 2026年1月1日からです。
土地の所有 — 資本金5,000万バーツ以上
投資奨励法 第27条が「委員会が適当と認める範囲で、他の法律の制限を超えて」土地の所有を認めています。現行の基準は BOI 告示 16/2567(2024年11月1日)です。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 対象 | 払込済の登録資本金が 5,000万バーツ以上の奨励企業 |
| 事務所用の土地 | 5ライを超えない |
| 現業労働者の住宅用の土地 | 20ライを超えない |
| 場所 | 奨励事業の土地の中でも外でもよい |
| 奨励が終わったら | 1年以内に売却または移転する |
よく見る「役員・専門家用の住宅は10ライまで」という数字は、この告示の本文にはありません。別の告示があるのかもしれませんが、確かめられませんでした。そのまま信じないでください。
BOI を取らない場合の会社設立
比較のために、通常の会社設立の数字も並べます。
登記の手数料(商務省事業開発局)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 定款(หนังสือบริคณห์สนธิ)の登記 | 500 バーツ |
| 会社(บริษัทจำกัด)の設立登記 | 5,000 バーツ |
| その他の登記(増減資・役員変更など) | 1件 500 バーツ |
| 登記済証 | 1通 100 バーツ |
| 会社証明書 | 1項目 40 バーツ |
| 書類の謄本+認証 | 1ページ 50 バーツ |
| 合名・合資会社の設立登記 | 1,000 バーツ |
これは省令(仏暦2563年=2020年12月29日官報、2021年1月1日施行)で決まった定額です。以前は資本金に比例していました。
電子登記の50%減額は、条文上は2023年12月31日までです。延長の省令は事業開発局の法令一覧に見当たりませんでした(2026年3〜4月に新しい省令案のパブリックコメントが行われた記載はあります)。「オンラインなら常に半額」と読める説明は当てになりません。実際に払う額は、申請の直前に確かめてください。
日数と期限
| 手続き | 期限・所要 |
|---|---|
| 社名の予約 | 承認後 30日有効 |
| 定款の提出 | 社名承認から 30日以内 |
| 創立総会の通知 | 開催の 7日前まで |
| 株式の払込 | 額面の 25%以上 |
| 設立登記の申請 | 創立総会から 3か月以内 |
| 窓口での登記(通常) | 1時間25分 |
| 他機関の同意が要る場合 | 2営業日 |
| 異議の申立てがある場合 | 37営業日 |
| 法人税の納税者番号 | 登記後 60日以内 |
定款の登記から3年以内に会社の登記をしないと、定款は失効します(民商法典1099条)。
発起人は「2人」です
民商法典の改正(第23号・2022年11月8日官報、2023年2月7日施行)で、発起人の人数が変わりました。
มาตรา ๑๐๙๗ บุคคลใด ๆ ตั้งแต่สองคนขึ้นไปจะเริ่มก่อการและตั้งเป็นบริษัทจำกัดก็ได้
「2人以上の者は会社を設立できる」。解散事由も「株主が1人になったとき」に変わりました(旧法は3人未満)。
BOI 自身の会社設立ガイドの中で、数字が食い違っています。比較表には「At least 3 owners」とあり、同じ資料の本文には「A minimum of two founders」とあります。法律に照らせば2人が正しく、表のほうが改正前の記述の残りです。
外国人事業法(FBA)の最低資本金
| 場合 | 最低資本金 |
|---|---|
| 外国人がタイで事業を始める(一般) | 200万バーツ以上 |
| リストに該当し許可が要る事業 | 300万バーツ以上(かつ3年間の年間支出見込みの平均の25%以上) |
| 就労許可1件につき(BOI ガイドの記述) | 払込資本金 200万バーツ、タイ人従業員 4人 |
資金の持ち込みには期限があります——最初の3か月で最低資本金の25%以上、1年以内に50%、残りは年25%以上ずつ、3年以内に全額。
外国人事業法のリストは3つです。リスト1(新聞・放送、農業、畜産、林業、漁業、タイ薬草の抽出、骨董品、仏像・鉢の製造、土地取引の9業種)は外国人は行えません。リスト2は閣議承認を経た大臣の許可、リスト3(会計、法律、建築、エンジニアリング、広告、ホテル業、旅行業、飲食の販売、小売・卸売の一部など)は事業開発局長官の許可が要ります。許可の申請手数料は 2,000バーツ、審査は 60日です。
税
| 税 | 率 |
|---|---|
| 法人所得税(標準) | 純利益の 20% |
| 中小企業(払込資本 500万バーツ以下かつ売上 3,000万バーツ以下) | 純利益 30万バーツまで 免税/30万〜300万 15%/300万超 20% |
| VAT | 7%(法定は10%。勅令で減率。2027年9月30日まで延長済み) |
| VAT の登録義務 | 年間の売上が 180万バーツを超えたら、30日以内に登録 |
歳入局の英語ページは古いままです。中小企業の定義に「売上3,000万バーツ以下」の条件が無く、30万バーツまでの免税も抜けています。タイ語のページと勅令の本文が正です。
この記事で確かめられなかったこと
- BOI の申請手数料。投資奨励法の本文、ガイドの手続きの章、FAQ を見ましたが記載を見つけられませんでした。「無料」とは書きません。
- 役員・専門家用の住宅の面積。上に書いたとおり、告示 16/2567 の本文にはありません。
- B1・B2 が B に統合された時期。現行が B のみであることは確かめましたが、統合を示す告示は確かめられませんでした。
- 電子登記の50%減額が2024年以降も続いているか。省令の一覧に延長の掲載がありませんが、「延長されていない」とは断定できません。
登記の順番そのものは「タイで会社を作る」にまとめてあります。制度は変わります。とくに手数料と VAT の減率は期限つきなので、申請の直前に確かめてください。代行の会社を見比べたいときは、この記事の下にある比較ナビへ進んでください。
出典
- BOI Investment Promotion Guide 2025(2026-09-06 取得)
- BOI คู่มือการขอรับการส่งเสริมการลงทุน 2569(タイ語版)(2026-09-06 取得)
- 投資奨励法 B.E. 2520(BOI 公式英訳)(2026-09-06 取得)
- BOI Visa and Work Permit Regulations(2025年5月)(2026-09-06 取得)
- BOI 告示 16/2567 土地所有の許可の基準(2026-09-06 取得)
- BOI Guide to Starting a Business in Thailand 2026(2026-09-06 取得)
- 登記手数料を定める省令 พ.ศ. 2563(商務省事業開発局)(2026-09-06 取得)
- 民商法典改正法 第23号 พ.ศ. 2565(発起人2人・2023年2月7日施行)(2026-09-06 取得)
- 外国人事業法 พ.ศ. 2542(BOI 公式英訳)(2026-09-06 取得)
- 外国人の最低資本金を定める省令 พ.ศ. 2562(2026-09-06 取得)
- タイ歳入局 法人所得税の税率(2026-09-06 取得)
- タイ歳入局 中小企業の軽減税率(タイ語)(2026-09-06 取得)
- タイ歳入局 VAT(2026-09-06 取得)
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