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タイで転職するとき — 補償金・予告・就労許可の数字

タイで仕事を変える前に知っておく数字を、労働者保護法と役所の公表資料から並べました。勤続年数ごとの解雇補償金、解雇予告の決まり、年次有給の法定日数と退職時の買取、社会保険の料率と2026年1月の上限改定、就労許可の手数料、そして滞在の許可に必要な国籍別の月収の下限です。

この記事の要点

  • 解雇補償金は勤続年数で段階的に決まります。120日以上1年未満で30日分、1〜3年で90日分、3〜6年で180日分、6〜10年で240日分、10〜20年で300日分、20年以上で400日分です(労働者保護法 第118条)。定年退職も解雇に含まれます。
  • 「試用119日以内なら何も要らない」は誤りです。その119日は補償金の下限(120日)から来ていて、試用期間の制度ではありません。法律は逆に「試用の契約も期間の定めのない契約とみなす」と定めており、解雇には予告が要ります。
  • 予告は書面で、いずれかの賃金支払日またはその前に通知し、次の賃金支払日に効力が生じます。3か月を超えて予告する必要はありません。即時に辞めさせる場合は、効力発生日までの賃金相当額を退職日に支払います。
  • 年次有給は継続勤務1年で年6労働日以上。繰越の合意ができます。退職するときは、自己都合で辞める場合も、累積分が賃金として支払われます(第67条)。
  • 社会保険の保険料は使用者5%・被保険者5%・政府2.75%。保険料の計算に使う賃金の上限は2026年1月1日に15,000バーツから17,500バーツへ変わりました(被保険者の月額上限は750→875バーツ)。社会保険事務局の解説ページには、いまも旧値のままのページが残っています。
  • 滞在の許可には国籍別の月収の下限があります。日本国籍は月50,000バーツ。会社側にも払込資本金200万バーツ以上、外国人1人につきタイ人常勤4人という条件が付きます(入国管理局命令 12/2568)。

タイで仕事を変えるとき、日本と同じつもりで進めると足元をすくわれます。辞めるときにいくら受け取れるのか、予告はいつまでに要るのか、就労許可はどう書き換わるのか、給与がいくらないと滞在の許可が下りないのか。ここでは、その金額と日数を法令と役所の公表資料から並べます。会社は勧めません。

辞めるとき — 解雇補償金は勤続年数で決まります

タイの労働者保護法(พ.ร.บ. คุ้มครองแรงงาน พ.ศ. ๒๕๔๑)第118条は、解雇された労働者に対する補償金を勤続年数の段階で定めています。単位は「最終賃金率の何日分か」です。

勤続年数補償金(最終賃金の日数分)
120日以上 1年未満30日
1年以上 3年未満90日
3年以上 6年未満180日
6年以上 10年未満240日
10年以上 20年未満300日
20年以上400日

下の2段(10〜20年の300日、20年以上の400日)は第7次改正で入ったもので、官報は第136巻第43号ก21頁・2019年4月5日公布です。第9次改正(2025年11月7日公布)でも第118条は改正されていません。

あわせて押さえておくと違いが出るところです。

  • 定年退職も「解雇」に含まれます。第118/1条が、使用者と労働者の合意または使用者が定めた定年による退職を、第118条の解雇とみなすと定めています。つまり定年でも補償金の対象です。
  • 期間の定めが確定した雇用で、その期間どおりに終わった場合は対象外です。
  • 補償金が出ない場合があります(第119条)——職務上の不正、使用者に対する故意の刑事犯、故意に損害を与えた場合、重大な損害を生じさせた過失など。
  • 自分から辞める場合は補償金は出ません。これは「解雇」に対する制度です。

「試用期間なら何も要らない」は誤りです

タイで働いたことのある人の間でよく言われるのが「試用119日以内なら会社は何も払わなくていい」という話です。ここは正確に分けてください。

その119日は、上の表の「120日以上」という補償金の下限から来ています。試用期間という制度から来ているのではありません。法律は逆のことを書いています。

ทั้งนี้ ให้ถือว่าสัญญาจ้างทดลองงานเป็นสัญญาจ้างที่ไม่มีกำหนดระยะเวลาด้วย

試用の雇用契約も、期間の定めのない契約とみなす」——第17条第2項です。期間の定めのない契約である以上、解雇には予告が要ります。勤続日数は関係ありません。

なお、試用期間の上限日数や延長の回数について、労働者保護法に規定はありません。統合版の全文を検索しても、「ทดลองงาน(試用)」が出てくるのは上の第17条第2項の1か所だけです。

予告 — 書面で、次の給料日に効く

第17条は、期間の定めのない契約の解約についてこう組み立てています。

項目内容
方式書面で相手に知らせる
タイミングいずれかの賃金支払日またはその前に通知し、次の賃金支払日に解約の効力を生じさせる
上限3か月を超えて予告する必要はない
即時に辞めさせる場合効力発生日までの賃金相当額を、退職日に支払う(第17/1条)
予告が要らない場合第119条の解雇、および民商法典第583条による解雇
期間の定めがある契約期間満了により予告なく終了

月給制で毎月末が給料日なら、月末までに書面で通知すれば翌月末に効くという形になります。労働者の側から辞めるときも同じ条文が当たります。

年次有給休暇と、辞めるときの買取

項目内容
法定日数継続勤務1年で、年6労働日以上(第30条)
指定使用者が事前に指定、または労使の合意で指定
2年目以降6労働日を超えて与えてもよい
繰越事前の合意により累積・繰越ができる
勤続1年未満按分して与えることもできる
退職時自己都合で辞める場合も、第119条に当たる解雇の場合も、累積分は賃金として支払う(第67条)

法定は年6日です。会社の規程がそれより多いことはよくありますが、下回ることはできません。そして辞めるときに残っている分は、自分から辞めても買い取られます。ここは日本と扱いが違うので、退職の条件を詰めるときに確かめてください。

就労許可は、勤務先ごとのものです

ビザとは別に、働くには就労許可が要ります。転職すると、勤務先の記載を書き換える手続きが発生します。

項目金額・期間
申請の提出100 バーツ
就労許可 3か月以内750 バーツ
3か月超6か月以内1,500 バーツ
6か月超1年以内3,000 バーツ
再交付500 バーツ
記載事項の変更300 バーツ
有効期間交付日から2年を超えない
審査15営業日以内

外国人が就けない業務もあります。労働省の告示(2020年4月1日付・官報 第137巻 特別92号 ง、2020年4月21日公布、公布から60日経過後に施行)が 40業務を4つの区分に分けています——絶対に禁止 27条件付き 3雇用主が必要 8MOU に限る 2。労働省の解説ページには古い「39職種」の記載が今も残っているので、注意してください。

滞在の許可には、給与の下限があります

ここは転職の条件を決めるときに直接効きます。入国管理局の命令が、国籍ごとの月収の下限を定めています。

国・地域月収の下限
日本・欧州(ロシアを除く)・オーストラリア・カナダ・アメリカ50,000 バーツ/月
韓国・シンガポール・台湾・香港45,000 バーツ/月
その他のアジア・南米・東欧など35,000 バーツ/月
アフリカ(南アフリカを除く)・カンボジア・ミャンマー・ラオス・ベトナム25,000 バーツ/月

会社の側にも条件が付きます。

  • 払込済の登録資本金 200万バーツ以上
  • 外国人1人につき、タイ人の常勤従業員4人
  • ただし駐在員事務所・地域統括事務所・多国籍企業の支店は 1対1に緩和される

根拠は入国管理局命令 12/2568(2025年1月23日)です。よく引かれる「国家警察庁命令 327/2557」は2023年9月26日の命令 542/2566 により廃止済みで、その後 242/2566 を経て現行の 12/2568 になりました。金額(日本国籍は月5万バーツ)は変わっていませんが、根拠として古い命令を挙げている資料は当てになりません。バンコク入管のサイトが今も配っている資料も一つ前の版です。

社会保険 — 2026年1月に上限が変わりました

被用者は社会保険(ประกันสังคม)の被保険者になります。国籍による除外はありません。適用除外は公務員、在学先に雇用される学生、外国政府・国際機関の被用者などです。

区分政府使用者被保険者
傷病・障害・死亡・出産1.5%1.5%1.5%
児童手当・老齢1.0%3.0%3.0%
失業0.25%0.5%0.5%
合計2.75%5.0%5.0%

保険料の計算に使う賃金には上下限があります。ここが2026年1月1日に変わりました。

時期賃金の上限被保険者の月額保険料の上限
〜2025年12月31日15,000 バーツ750 バーツ
2026年1月1日〜2028年12月31日17,500 バーツ875 バーツ
2029年1月1日〜2031年12月31日20,000 バーツ1,000 バーツ
2032年1月1日〜23,000 バーツ1,150 バーツ

下限は1,650 バーツで据え置きです。省令の官報は第142巻第81号ก5頁・2025年12月12日公布。社会保険事務局の解説ページには、いまも「15,000 บาท」と書かれたページが残っています。そこだけ見ると間違えます。

給付は7種類です——傷病、出産、障害、死亡、児童手当、老齢、失業。失業給付を受ける条件は次のとおりです。

  • 最後の勤め先で失業する前の15か月以内に6か月の拠出があること
  • 失業の期間が8日以上であること
  • 雇用局のオンライン(e-service.doe.go.th)で失業者の登録をすること

転職の間が空くときは、この登録を忘れないでください。登録しないと給付の対象になりません。

人材紹介は免許が要る仕事です

人を紹介して職に就かせることを業として行うには免許が要ります。根拠は職業紹介及び求職者保護法(พ.ร.บ. จัดหางานและคุ้มครองคนหางาน พ.ศ. 2528、その後の改正を含む)で、国内向けの免許は労働省の雇用局が出します。

項目内容
手続の名称การขอรับใบอนุญาตจัดหางานให้คนหางานทำงานในประเทศ
免許の有効期間2年
免許の手数料5,000 バーツ
申請の手数料10 バーツ

海外で働く求職者に紹介する場合は別の手続きです。求職者の側は「御社は職業紹介の免許をお持ちですか」と聞いてよい立場にあります。ただし免許があることは腕や相性の保証ではありません。制度の中にいるかどうかが分かるだけです。

動く前に決めておくこと

  • いまの勤め先を辞める形。自分から辞めるのか、合意で終えるのか。補償金が出るのは解雇のときだけです。ここは金額に直結します。
  • 予告を書面で出す日。給料日を基準に、次の給料日に効きます。
  • 残っている年次有給。自己都合でも買い取られます。日数を先に確かめてください。
  • 次の勤め先の給与が下限を満たすか。日本国籍なら月5万バーツです。ここを下回ると滞在の許可の話になります。
  • 就労許可の書き換え(300バーツ)と、その間の空白。働き始める日と、許可が下りる日(審査15営業日以内)の関係を先に決めます。
  • 失業の期間ができるなら、雇用局のオンラインで登録する。

この記事で確かめられなかったこと

  • 就労許可そのものの発給要件としての資本金・人数比。上の表は入国管理局の滞在許可の基準です。雇用局側の現行規程(พ.ศ. 2568 版)はスキャン画像で本文を読めませんでした。「200万バーツごとに1人・上限10人」という古い記載がありますが、いま有効かは確かめられていません。
  • 2025年8月8日公布の就労許可省令(第2号)の改正内容。フォントが壊れて本文を読めませんでした。
  • 社会保険の料率に時限的な減免が出ていないこと。省令の一覧に見当たりませんが、「出ていない」と明示した告示は取れていません。

制度は変わります。実際、社会保険の上限は2026年1月に、禁止職種の告示は2020年に変わっています。手続きをするときは、必ず出典のページで最新を確かめてください。

出典

このページの内容は 2026-09-06 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。