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タイから日本へ戻るときの学校 — 編入の手続きと帰国生の枠

駐在を終えて日本へ戻るとき、子どもの学校はどう決まるのか。転入の手続きから学校が指定されるまでの流れ、海外にいるあいだの就学義務の扱い、高校入試での帰国生の特別枠について、文部科学省の公式資料から確認しました。

この記事の要点

  • 帰国後の公立小中学校は、こちらが選ぶのではなく、転入の手続きのあとに指定されます。文部科学省は「転入手続後、住民基本台帳に基づいて、学齢簿が編製され、就学すべき学校の指定・編入学期日が通知されます」と説明しています。
  • 海外にいるあいだ、日本国憲法26条の就学義務は直接には及びません。「憲法第26条は、属地的に働く規定である」というのが文部科学省の説明です。
  • 編入する学年は年齢で決まります。9月1日を基準にする学校で1学年上を走っていた子は、帰国すると自分の学齢の学年へ戻され、実質1年をやり直す形になります。上へ飛び級はできません。
  • タイで新入生を受け入れている日本の高校課程は、こちらが調べた範囲では見つかりませんでした。中学部を終えたあとは、帰国して受験するか、インター校へ移るか、日本の寮のある高校や通信制を選ぶことになります。
  • 高校入試については「各都道府県教育委員会や学校では、入試での特別枠の設定や受入への特別な配慮を行っています」とされています。インター校や現地校からでも受験できます(学校教育法施行規則第95条第1号)——条件は、その学校がタイで正規の教育機関と認められていることです。
  • 大学入試での帰国生の扱いについては、この文部科学省のQ&Aには記載がありませんでした。個別の大学の募集要項で確かめる必要があります。

タイでの生活が終わりに近づくと、次は「日本へ戻ったとき、子どもの学校はどうなるのか」という問いになります。ここは行きよりも情報が少ないところです。手続きの順番、卒業資格がどう引き継がれるか、帰国生の枠がどこにあるかを、文部科学省の公式資料から確認しました。

公立の小中学校は「選ぶ」のではなく「指定される」

文部科学省の海外子女教育のQ&Aは、帰国後の流れをこう書いています。

転入手続後、住民基本台帳に基づいて、学齢簿が編製され、就学すべき学校の指定・編入学期日が通知されます。

順番が大事です。先に住むところを決めて転入の手続きをすると、そこから通う学校が決まります。学校を選んでから住まいを決めるのではありません。行きたい学校がある場合は、その学校の通学区域に住むことになります。

編入する学年は、年齢で決まります。9月1日を基準にする学校で1学年上を走っていた子(4月2日から9月1日生まれ——9月1日生まれもこちら側です)は、帰国すると自分の学齢の学年へ戻されます——上へ飛び級はできません。実質的に1年をやり直す形になるので、帰る時期を決める前にここを確かめてください。下の学年へ入りたい場合の相談先は、住む自治体の教育委員会です。

帰国の時期が学年の途中になると編入学の期日も年度の途中になります。住まいの契約と転入の手続きを、学校の都合より前に置いておくと、この通知が早く出ます。

海外にいるあいだの就学義務

「インターナショナルスクールに通わせていたが、日本の義務教育の扱いはどうなるのか」という心配をよく聞きます。文部科学省の説明はこうです。

憲法第26条は、属地的に働く規定であるとされています。憲法第26条は直接在外邦人の子どもに適用されません。

つまり海外に住んでいるあいだは、就学義務が直接には及びません。タイでインター校や現地校に通っていたことが、義務の不履行になるわけではありません。

ただし日本国内の場合は扱いが違います。文部科学省は「保護者が日本国籍を有する子を一条校として認められていないインターナショナルスクールに就学させたとしても、法律で規定された就学義務を履行したことにはなりません」と明記しています。帰国して日本に住みながらインター校に通わせる場合は、この話にあたります。海外にいるときと戻ったあとで、前提が変わります。

卒業資格は、どこを出たかで決まる

出た先日本での扱い(文部科学省の記載)
日本人学校 中学部国内の高等学校の入学資格を有する
日本人学校 高等部国内の大学の入学資格を有する
私立在外教育施設 中学部国内の高等学校の入学資格を有する
私立在外教育施設 高等部国内の大学の入学資格を有する
補習授業校全日制ではないため、この一覧に卒業資格の記載はない

日本人学校は「国内の小学校、中学校又は高等学校における教育と同等の教育を行うことを目的とする、全日制の教育施設」と定義され、文部科学大臣の認定を受けています。タイの日本人学校は、文部科学省の認定した在外教育施設の一覧に載っています。

ただし、高等部の行はタイでは使えないと考えてください。上の表は制度の説明で、タイに日本の高校課程があるという意味ではありません。タイで新入生を受け入れている日本の高校課程は、こちらが調べた範囲では見つかりませんでした。つまり中学部を終えたあとの進路は、帰国して日本の高校を受ける/インターナショナルスクールへ移る/日本の寮のある高校や通信制を選ぶのいずれかになります。

高校受験は年に1回です。中学3年の秋までにどれを選ぶかを決めておかないと、選択肢が1年ぶん減ります。いま在籍している学校の設置部(小学部までか、中学部まであるか)を、学校の公式で確かめてください。

インター校や現地校からでも、日本の高校は受けられる

学校教育法施行規則第95条第1号は、高等学校の入学資格を「外国において、学校教育における9年の課程を修了した者」にも認めています。日本人学校を出た場合だけの話ではありません。

ただし条件が1つ付きます。文部科学省の「高等学校入学資格 Q&A」は、「外国にあるインターナショナルスクールが、当該外国において正規の教育機関として認められているかどうかを在日大使館を通じて確認することが必要です。正規の教育機関であって、9年の課程を修了した者については、高等学校入学資格を有します」としています。ここで動くのは、まず受験先の高校か、住む予定の都道府県の教育委員会です。この Q&A は入学資格を判断する側(高校・教育委員会)に宛てた文書で、在日タイ大使館へ照会するのはその受入側です。保護者が先に動くのは、大使館ではなく受験先の高校か教育委員会です。帰る前に、学校から在学証明と課程修了の証明を英文で取っておくと、その照会が早く進みます。

いちばん見落とされるのは「調査書」です

日本の公立高校の一般入試は、中学校が出す調査書(内申点)を見ます。インター校や現地校には、この書式の調査書がありません。何を代わりに見るかは自治体と学校ごとに違い、受けられるかどうかそのものが変わることがあります。

制度の側にも受け皿はあります。学校教育法施行規則第90条第3項は「調査書は、特別の事情のあるときは、入学者の選抜のための資料としないことができる。」と定めています。ただし文部科学省は、この扱いについて「学力検査を行わない場合は除く」としています。面接や作文だけで行う帰国生の特別選抜では、この受け皿が使えないことがあります。実際にどう扱うかは自治体ごとに違うので、必ず確かめてください。

もう1つ、時期の話があります。調査書を出すのは帰国後に編入した日本の中学校なので、いつ戻るかで「調査書が出るかどうか」自体が変わります。

帰る学年を決める前に、戻る都道府県の教育委員会へ「調査書が無い場合に何を提出するのか」を聞いてください。帰国生の枠があるかどうかより、こちらのほうが先に効きます。

同じ Q&A は、保護者が子が満15歳に達する日の属する学年の終わりまで中学校等に就学させる義務を負うとしています。帰る時期を決めるときの区切りになります。

補習授業校は「現地の学校や国際学校等に通学している日本人の子どもに対し、土曜日や放課後などを利用して国内の小学校又は中学校の一部の教科について日本語で授業を行う教育施設」です。日本語を続けるための場であって、日本人学校の代わりではありません。

高校入試の帰国生の枠

文部科学省のQ&Aには、こう書かれています。

各都道府県教育委員会や学校では、入試での特別枠の設定や受入への特別な配慮を行っています。

ただし条件は自治体と学校ごとに違います。何年の在外期間が要るのか、帰国後どのくらいまでが対象なのか、どの学校が枠を持っているのか。これらはこの資料には書かれていません。戻る予定の都道府県の教育委員会で、名指しで確かめてください。「帰国生だから枠がある」と決めてかからないことです。

大学入試での帰国生の扱いについては、このQ&Aには記載がありませんでした。個別の大学の募集要項を見る必要があります。国際バカロレアのディプロマを使う道もありますが、それは学校とプログラムの話なので、別の記事にまとめてあります。

帰る半年前から動かすもの

  • 住むところを先に決める。通う学校はそこから決まります
  • 在学証明と成績の書類を、いまの学校にいるうちに英語と日本語でそろえる。離れてからだと取り寄せに時間がかかります
  • 高校入試の枠は、戻る都道府県の教育委員会に直接聞く。条件が自治体ごとに違います
  • 年度の途中の帰国になるなら、編入学の期日がいつ通知されるかを転入の窓口で確かめる
  • 日本語の学習の空白を数える。補習授業校に通っていたかどうかで、戻ったあとの負担が変わります

このページの内容は 2026-09-06 に確認しました。制度は変わります。手続きの前に、文部科学省と、戻る自治体の公式で最新の内容を確かめてください。

学年の切れ目が4か月ずれます

帰国の時期を決めるとき、いちばん効くのがこれです。インター校は8月始業、日本の学校と日本人学校は4月始業で、学年の切れ目が約4か月ずれます。

学校始業学期の区切り(2026/27年度)
ISB(米国系)8月10日2セメスター。第2セメスターは1月12日から。終業は6月11日。学習日 181日
Bangkok Patana8月19日3学期(〜12月18日/1月11日〜4月2日/4月19日〜6月25日)。180日
Harrow8月20日3学期(〜12月11日/1月5日〜4月2日/4月19日〜6月25日)
Shrewsbury8月31日3学期(〜12月18日/1月12日〜4月9日/4月26日〜7月2日)
泰日協会学校(バンコク日本人学校)4月17日3学期(〜8月7日/9月1日〜12月25日/1月7日〜3月11日)。入学式 4月18日、卒業式 2027年3月6日

インター校の学年が終わる6月下旬は、日本の学校の1学期の途中です。逆に、日本の学年が始まる4月は、インター校の第3学期のさなかにあたります。どちらで区切るかによって、子どもが「学年の途中で入る」ことになるか「区切りで入れる」かが変わります。

日本人学校は「各学期開始前に入学・編入学の受付手続きを行います」としています。学期の始まりに合わせるなら、その前に手続きが要るということです。

出典

このページの内容は 2026-09-06 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。