タイの虫よけ、選び方と使い方
タイの蚊は昼に刺すものと夜に刺すものが分かれます。どの成分の虫よけを選ぶか、子どもの年齢制限が日本と現地でどう違うか、塗り直しの間隔、日本から機内に持ち込めるのか、熱が出たときの見分け方までを公式情報だけで整理しました。
この記事の要点
- デング熱を運ぶ蚊は日中に活動します。夜だけ気をつければよいわけではなく、昼に屋外を歩く日ほど、朝に塗って昼に塗り直すことになります。
- 選ぶときは香りや値段ではなく有効成分と濃度を見ます。ディート、イカリジン、IR3535はWHOと米国CDCが挙げている成分で、タイでも同じ顔ぶれが売られています。
- 日焼け止めも使う日は、日焼け止めのあとに虫よけを塗ります。塗り直しは1〜2時間ごとで、水を浴びたり体を拭いたりしたあとにも塗り直します。
- 肌に塗る虫よけは機内に持ち込めますが、国際線は容器ひとつ100ml以下という液体の制限にかかります。殺虫剤と農薬は持ち込みも預け入れもできません。
- 刺されて熱が出たら、アスピリンやイブプロフェンは飲まないようタイ疾病管理局が求めています。消化管の出血や、肝臓・腎臓の不全を起こすおそれがあるためです。
タイに行くとき、荷物に入れるかどうかで一番迷わなくていいのが虫よけです。街なかでも島でも刺されますし、現地でも普通に売っています。ただし「いつ刺されるか」も「どの成分を選ぶか」も「子どもに何歳から使えるか」も、日本の夏に使う感覚とは少しずれます。このページは、成分の選び方、塗り方、日本から持っていくときの決まり、刺されて熱が出たときの見分け方を、公的機関とメーカーが公表している情報だけで整理したものです。どの商品が良いか、どの店で買うべきかという評価は扱いません。
タイで刺してくる蚊と、うつる病気
タイ保健省の疾病管理局(กรมควบคุมโรค)は、デング熱を「ネッタイシマカ(Aedes aegypti)とヤブカの一種(Aedes albopictus)が人から人へ運ぶ」病気だと説明しています。人が感染してから症状が出るまでは3〜14日、平均で4〜7日です。タイ食品医薬品局(อย.)は、蚊が運ぶ病気としてデング熱、マラリア、フィラリア(象皮病)、チクングニア熱、脳炎を挙げています。
デング熱を運ぶ蚊は昼間に刺す
ここが日本の感覚と一番ずれるところです。WHOはデング熱のファクトシートで「デング熱を広げる蚊は日中に活動する」と明記しています。厚生労働省検疫所(FORTH)も、デング熱・チクングニア熱を媒介する蚊は日中に活動し、マラリアを媒介する蚊は薄暗くなる夕方や明け方、夜暗くなった後に活動する、と分けて説明しています。つまり「夜だけ気をつければいい」ではありません。昼に屋外を歩く日ほど、朝に塗って昼に塗り直すことになります。
マラリアは行き先で変わる
米国CDCの渡航者向けタイ情報では、マラリアの感染がある地域は主にミャンマー・カンボジア・マレーシアと接する県で、とくにその地方部の森林と森林の縁とされています。一方、バンコク、チェンマイ、チェンライ、パンガン島、サムイ島、プーケット島では患者は「まれ、または少数」、クラビ県の島(ランタ島、ピピ島、ヤオノイ島、ヤオヤイ島)とパタヤ市では「感染なし」と書かれています。街と有名な島だけを回るなら、マラリアの予防薬を飲む話は基本的に出てきません。国境の県や森に入る予定があるなら、渡航前に医師へ相談する対象になります。CDCは同じページで、タイはチクングニア熱のリスクが高い地域だとも書いています。
蚊が増えるのはいつか
タイ疾病管理局は、デング熱の患者数について「4月から増え始め、6月から8月の雨季に最も多くなり、9月から減り始める」という季節の型を示しています。雨季に行くなら、虫よけは「あれば使うもの」ではなく「毎日使うもの」として持ち物に数えておくほうが現実的です。
虫よけは成分と濃度で見る
虫よけは香りや値段ではなく、有効成分と濃度で選びます。WHOはデング熱の予防としてディート(DEET)、ピカリジン、IR3535を含む忌避剤を挙げています。米国CDCは、EPA登録の忌避剤の有効成分としてディート、ピカリジン、IR3535、レモンユーカリ油(OLE)、パラメンタンジオール(PMD)、2-ウンデカノンの6つを挙げています。ピカリジンは米国外ではイカリジン、KBR3023とも呼ばれる同じ成分です。
| 有効成分 | 別の呼び方 | 成分として挙げている機関 |
|---|---|---|
| ディート | DEET、ジエチルトルアミド | WHO/米国CDC/タイ อย./厚生労働省 |
| イカリジン | ピカリジン、KBR3023 | WHO/米国CDC/タイ อย. |
| IR3535 | エチルブチルアセチルアミノプロピオネート | WHO/米国CDC/タイ อย. |
| レモンユーカリ油 | OLE、パラメンタンジオール(PMD) | 米国CDC/厚生労働省検疫所 |
| シトロネラ油 | น้ำมันตะไคร้หอม | タイ อย. |
日本で買える製品の濃度
日本では、肌に塗る虫よけは医薬品または防除用医薬部外品として売られています。フマキラーの製品情報サイトでは、ディートを有効成分とする「医薬品スキンベープミスト プレミアム」を第2類医薬品として、ディートの濃度を30%まで高めた製品と説明しています。イカリジンでは「天使のスキンベープ プレミアム」などを防除用医薬部外品として、イカリジンを15%配合と表示しています。日本のメーカーが高濃度としてうたっているのが、この30%と15%です。
なお厚生労働省の通知は、ディートを含む製品について「製品、その包装及び添付文書に、承認書に記載のディート濃度を明記すること」を求めています。パッケージのどこかに必ず濃度が書いてあるので、買うときはそこを見てください。
タイで売られている虫よけの成分
タイでは、肌に塗る虫よけはタイ食品医薬品局(อย.)が家庭用の有害物質(วัตถุอันตราย)として管轄しています。อย.の消費者向け資料は、肌に塗る虫よけを2種類に分けています。ひとつは化学成分を有効成分とするもので、ディート、イカリジン、エチルブチルアセチルアミノプロピオネート(IR3535)が挙がっています。もうひとつはシトロネラ油やユーカリ油を有効成分とするものです。日本で見かける成分と顔ぶれはほぼ同じなので、現地で買い足す場合も成分名で選べます。
子どもに使うとき、日本とタイで注意書きが違う
子ども連れなら、ここは出発前に確かめておく価値があります。ラベルに書かれる年齢の線が、日本と現地で違うからです。
日本では、厚生労働省が「ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について」(薬食安発第0824003号)で、製品の使用上の注意に次の内容を書かせています。12歳未満に使わせる場合は保護者等の指導監督の下で使うこと、顔には使わないこと。そのうえで回数の目安として、6か月未満の乳児には使用しないこと、6か月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日1〜3回、としています。
タイのอย.は、子どもへの使用は製品ラベルの警告表示に従うよう案内したうえで、有効成分の種類と濃度で年齢の線が変わるため「ほとんどの製品は4歳未満の子どもへの使用を禁じている」と書いています。米国CDCは別の線を示していて、レモンユーカリ油(OLE)とパラメンタンジオール(PMD)を含む製品は3歳未満の子どもに使わないこと、子どもの手・目・口・傷や荒れた肌には塗らないこと、顔に使うときは大人がいったん自分の手に出してから塗ること、としています。
日本で「6か月から使える」と書かれた製品を持っていっても、現地で買い足した製品は4歳未満に使えないかもしれない、ということです。買い足すときはラベルの年齢表示を読み直してください。
塗り方で効きが変わる
- 日焼け止めのあとに塗る — 米国CDCは「日焼け止めも使う場合は、必ず日焼け止めのあとに虫よけを塗る」としています。子どもに使うときも同じ順番です。
- 1〜2時間ごとに塗り直す — 厚生労働省検疫所は、忌避剤は1〜2時間ごとに繰り返し塗り、水を浴びたり体をタオルで拭いたりした後には再度塗る、としています。
- 肌が出ているところに塗るか、服の上から使う — これも厚生労働省検疫所の説明です。目、口、傷がある部位には使いません。
- やわらかい部位を避ける — タイのอย.は、目のまわり、唇、まぶた、わきの下、傷口には使わないよう求めています。
- 初めての製品はパッチテストから — อย.は、使う前に肘の内側や前腕に塗り、かぶれや刺激が出なければ他の部位に使う、という手順を示しています。
- 使ったら手を洗う — อย.の注意書きにあります。塗った手で目をこすらないことは厚生労働省の通知にも入っています。
- 必要なときだけ使う — อย.は「必要な場合にのみ使い、日常的に使い続けない」「パウダーやローションの代わりに使わない」としています。厚生労働省の通知も「漫然な使用を避け、蚊、ブユ(ブヨ)等が多い戸外での使用等、必要な場合にのみ使用すること」と書かせています。
服と宿でできること
忌避剤だけに頼らない、という考え方は各機関に共通しています。厚生労働省検疫所は「ゆったりとした長袖のシャツや長ズボン、ブーツ、帽子を身につけ、できるだけ皮膚が露出されている部分を減らす」ことを挙げています。タイ疾病管理局も、蚊に刺されない方法として、虫よけを塗る・蚊帳の中で寝る・長袖と長ズボンを着る、の3つを並べています。暑いタイで何を着るかはタイで着るもの、持っていくものにまとめています。
宿については、米国CDCが「エアコンか、窓とドアの網戸がある宿を選ぶ」「それがない場合や屋外で寝る場合は蚊帳を使う」としています。蚊帳を買うなら、コンパクトで白い長方形、1平方インチあたり156の目、マットレスの下に押し込める長さのものを、という具体的な条件も示されています。厚生労働省検疫所も、蚊帳は網戸が不十分だったりエアコンがなかったりする宿では最も有効な蚊よけだとし、すそが床に届かない場合はマットレスの下に入れる、としています。
衣類やテント、靴に0.5%のペルメトリンで処理する方法も米国CDCが挙げています。処理した衣類は洗濯を重ねても効果が続くとされる一方、ペルメトリンを肌に直接使ってはいけません。
部屋で使う電気式の蚊よけを現地で買う場合は、コンセントの形と電圧が日本と違います。タイ国政府観光庁の基礎知識では、タイの電圧は交流220V(50Hz)、プラグはA・BF・Cタイプと案内されています。詳しくはタイのコンセントと電圧、変換プラグはいるのかを見てください。
タイで買うとき、ラベルのどこを見るか
バンコクをはじめタイ国内で虫よけを買い足すとき、อย.が繰り返し案内しているのは「ラベルの登録番号を見る」ことです。肌に塗る虫よけのうち化学成分を有効成分とするものは、อย.のマークの枠の中に วอส.(家庭用有害物質)の登録番号が表示されているものを選ぶ、とされています。
登録番号のない製品が実際に出回ることもあります。タイ食品医薬品局は、オンラインで売られていた電気式の蚊よけ液について、タイ語のラベルも製品登録番号もない製品を警察と合同で摘発した件を公表しています。発表によれば、押収品からはメペルフルトリンとジメフルトリンというピレスロイド系の成分が検出され、これらはอย.が輸入・製造・登録を認めたことがなく、効果と安全性の評価を経ていないものだとされています。出品者が「妊婦や乳児にも使える」「ペットに害はない」と広告し、市場価格より安かったため広まった、とも書かれています。
保管の注意も同じ資料に出ています。飲まないこと、子ども・食品・ペットから離れた場所に密閉して保管すること、の2点です。どこの店で買うかを気にするより、手に取った製品のラベルに登録番号・有効成分名・年齢の注意書きがあるかどうかを見るほうが確実です。
日本から持っていくときの決まり
手荷物にするか、預けるか
肌に塗る虫よけは、国土交通省の「機内持込・お預け手荷物における危険物について」の一覧で「医薬品類」に入ります。「虫さされ・かゆみ止め薬(液体、スプレー)、虫よけ(液体・スプレー)」として、機内持込みも預け入れもできると示されています。数量は一容器あたり0.5ℓまたは0.5kg以下、1人あたり2ℓまたは2kg以下で、この2ℓ/2kgは化粧品類・医薬品類・その他のスプレー缶の合計数量です。ガスが充填されたスプレーは、噴射弁が偶発的に押されないようキャップなどで保護してあることが条件です。
ただし国際線には、客室内に持ち込む液体物の別の制限がかかります。国土交通省の資料では、液体物には液体に加えてジェル類とエアゾール(煙霧質)が含まれ、容器ひとつが100ml以下でなければ中身が少量でも持ち込めません。それらをジッパー付きで容量1ℓ以下の透明プラスチック袋に余裕をもって入れ、袋は旅客1人につき1つまでです。この制限は預け入れの手荷物には適用されません。市販の虫よけスプレーは200ml前後の容量が多いので、スーツケースに入れて預けるのが早道です。
持ち込めないもの
同じ一覧で、「殺虫剤」と「農薬」は液体類の欄に、機内持込みも預け入れもできないものとして挙がっています。くん煙式殺虫剤も同じく不可です。肌に塗る虫よけと、部屋に噴霧する殺虫剤は扱いが違います。判断に迷うものは利用する航空会社に確認するよう、国土交通省も案内しています。
刺されたあと、熱が出たら
米国CDCは、刺されたところは掻かず、市販のかゆみ止めや抗ヒスタミン薬のクリームでかゆみをやわらげるとしています。
問題は熱が出たときです。タイ疾病管理局はデング熱の初期対応として、十分に休むこと、熱があればパラセタモール(アセトアミノフェン)を飲むか体を拭いて熱を下げること、そしてアスピリンやイブプロフェンなどのNSAIDsとステロイドは絶対に飲まないことを挙げています。消化管の異常な出血や急性の肝不全・腎不全を起こすおそれがあるためです。水分は水よりも経口補水液や果汁がよいとされ、黒・赤・茶色の飲食物は避けるよう書かれています。
そのうえで、次の兆候は危険な段階に入るサイン(Warning sign)として挙げられており、出たらすぐ医師のところへ戻るよう求めています。
- 熱が下がったのに具合が良くならない、だるい、力が入らない、落ち着かない
- 腹痛がある、または1日に3回を超えて吐く
- 立ちくらみ、失神しそうになる、めまい、手足が冷たい、ぐったりしている
- この4〜6時間で尿が減った、または出ていない
- 鼻血、黒い便、吐血、周期外や異常に多い出血、濃い茶色や黒い尿など、ふだんない出血
タイ疾病管理局のホットラインは1422です(公式サイトに「สายด่วน 1422」として掲示されています)。病院にかかったときの費用と保険の考え方はタイの医療保険、入る前に知っておくことにまとめています。
出発前に決めておくこと
虫よけは、荷造りの段階でほとんど決まる持ち物です。塗り直す前提で容量を選ぶ、預ける荷物に入れる、子どもの分は年齢の注意書きを読んでおく、日焼け止めの後に塗る順番を家族で共有しておく。この4つで現地でやることが減ります。
日本とタイの時差は、タイ国政府観光庁の案内でマイナス2時間、タイで午前8時のとき日本は午前10時です。時差が小さいので到着した日から予定を入れやすく、そのぶん初日の昼から蚊のいる屋外に出ることになります。時差の詳しいところは日本とタイの時差にあります。旅の準備まわりの記事は旅の準備の記事一覧から辿れます。
ここに書いた数値と注意書きは2026年8月31日に各機関の公式ページで確認したものです。制度や表示は改定されるので、出発前に各機関の公式サイトで確認してください。
出典
- 厚生労働省検疫所 FORTH「病気にならないために」(蚊・ダニの活動時間帯、服装、蚊帳、忌避剤の使い方)(2026-08-31 取得)
- 厚生労働省「ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について」(薬食安発第0824003号)(2026-08-31 取得)
- WHO ファクトシート「Dengue and severe dengue」(媒介蚊・日中に活動・忌避剤の成分)(2026-08-31 取得)
- 米国CDC Travelers' Health「Avoid Bug Bites」(EPA登録成分・日焼け止めとの順番・子どもへの使用・蚊帳・ペルメトリン)(2026-08-31 取得)
- 米国CDC Travelers' Health「Thailand」(マラリアの感染地域・チクングニア熱のリスク)(2026-08-31 取得)
- タイ保健省 疾病管理局(กรมควบคุมโรค)「ไข้เด็งกี่ (Dengue)」(媒介蚊・潜伏期間・季節性・予防・警告サイン・ホットライン1422)(2026-08-31 取得)
- タイ食品医薬品局(อย.)「ผลิตภัณฑ์ทากันยุง(肌に塗る虫よけ)」(有効成分の分類・อย.วอส.表示・使用上の注意・子どもの年齢)(2026-08-31 取得)
- タイ食品医薬品局(อย.)「เที่ยวอย่างไรให้ปราศจากยุงรบกวน(蚊に悩まされない旅の仕方)」(成分の種類・パッチテスト・服装と蚊帳)(2026-08-31 取得)
- タイ食品医薬品局(อย.)報道発表「タイ語ラベルと製品登録番号のない電気式蚊よけ液の摘発(メペルフルトリン・ジメフルトリン検出)」(2026-08-31 取得)
- フマキラー 製品情報サイト「スキンベープ」(イカリジン15%配合品・ディート30%配合品の区分と濃度)(2026-08-31 取得)
- 国土交通省「機内持込・お預け手荷物における危険物について」(2026-08-31 取得)
- 国土交通省「機内への持込み又はお預け手荷物に制限がある品目の代表例」(医薬品類としての虫よけ・殺虫剤・農薬の可否)(2026-08-31 取得)
- 国土交通省「国際線の航空機客室内への液体物持込制限について」(2026-08-31 取得)
- 国土交通省「量的制限の対象となる液体物のリスト」(液体物にジェル類・エアゾールを含む旨)(2026-08-31 取得)
- タイ国政府観光庁 公式「基礎知識」(時差・電圧とプラグ)(2026-08-31 取得)
このページの内容は 2026-08-31 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。