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タイの屋台の味を、家でつくる

タイの屋台に並ぶ料理は何でできているのか、その味を家で出すには何を買えばよいのか。屋台料理の地方差、麺の選び方、カレーペーストの中身、ココナッツミルクの使い分け、米、日本とタイでの買い方、台所での注意までを公式情報だけで整理しました。

この記事の要点

  • 屋台の味は辛さだけでできていません。辛味・甘味・酸味・塩味・旨味の組み合わせなので、辛さだけを再現しても近づきません。
  • 家でそろえるものは、屋台の卓上にある調味料入れと同じ顔ぶれです。砂糖、ナンプラー、粉唐辛子、酸味(酢やライム)を手元に置き、最後に自分で整えます。
  • タイのスープとカレーを日本の料理と分けているのは、レモングラス、こぶみかんの葉、ガランガルの三つの香りです。
  • ココナッツミルクは固まった部分と液体の部分を分けて使い、最後に加えたぶんは煮立てません。使わないカレー(ゲーンパー)もあります。
  • 挽き肉や鶏肉を扱う料理が多いので、加熱は中心部の温度が75℃で1分間以上が目安になります。

タイの屋台で食べた一皿を、家でもう一度出したい。そう思ったときに困るのは、レシピの数ではなく「何が味を決めているのか」が分からないことです。ここでは、屋台に並ぶ料理が何でできているのかを公式の情報でたどり、そのうえで家の台所で何を用意すればよいのかを整理します。どの店がおいしいかという評価は扱いません。店の話は口コミの面に置いてあります。

屋台に並んでいるのは、どんな料理なのか

タイ国政府観光庁(TAT)の日本語公式サイトは、タイ料理について「『辛い』と思われがちなタイ料理ですが、その味の中には『辛味』のほかに『甘味』、『酸味』、『塩味』と『旨味』の5つの味が組み合わさり、独特の美味しさを作り出しています」と書いています。屋台の一皿も、この5つの組み合わせでできています。辛さだけを再現しても、屋台の味にはなりません。

味は地方でわかれています

同じ「タイ料理」でも、地方で組み立てが違います。TATの説明はこうです。

  • 北部 … 「脂が多めながらもマイルドな味」。ゲーン・ハンレー(ミャンマー風ポークカレー)やサイウア(ハーブソーセージ)が代表的です。
  • 東北部(イサーン) … 「辛味と塩味が強い味」。ソムタム(青パパイヤのサラダ)、ラープ(ひき肉サラダ)、ガイヤーン(鶏炭火焼き)を、もち米とともに食べます。
  • 南部 … 「豊富な魚介類が特徴」。生臭さを消すためにターメリックなどのスパイスを使う、辛い料理です。
  • 中部 … 「比較的マイルドで甘みのある味」で、細長いうるち米と食べるのが一般的です。

屋台で「これが食べたい」と思ったものが、どの地方のものかを知っておくと、家でつくるときに何を買うかが決まります。ソムタムやガイヤーンを再現したいのに、うるち米しか炊いていなければ食べ方が変わってしまいます。

麺料理は「選ぶ」料理です

屋台の麺、クイッティアオは、決まった一品ではありません。TATの公式ページは、注文を「①麺の種類を選ぶ ②スープの有無や種類を選ぶ ③トッピングを選ぶ」の三段階だと説明しています。家でつくるときも、この順に決めると迷いません。

麺の呼び名何からできているか太さ
セン・レック米粉1〜3mmほどの細麺
セン・ヤイ米粉1.5〜2.5cmほどの太麺
セン・ミー米粉1mm以下ほどの極細麺
バミー小麦粉(卵入り)
ウンセン緑豆粉とタピオカでんぷん

セン・ヤイについてTATは「他の米麺と違い、タイ国内では通常乾燥させていない生麺が使用されます」と書いています。日本で乾麺しか手に入らないときに、屋台の食感と違って感じるのは、まずここです。

スープの側も選べます。ナムサイ(澄んだスープ)、トムヤム、イェンタフォー(ピンク色のスープ)、ナムトック(血を加えたスープ)、そして汁のないヘン。トッピングは豚・鶏・牛・鴨のほか、トゥン(煮込み)、ムー・サップ(挽き肉)、ルークチン(つみれ)、ギアオ(ワンタン)、ギアオ・トート(揚げワンタン)などです。麺・スープ・具の三つを別々に考えるのが、屋台の麺の作り方そのものです。

朝と昼で、並ぶものが変わります

屋台の料理には時間帯があります。TATはムーピン(豚串焼き)について「屋台で朝早くから販売されることが多く、お昼過ぎにお店を閉める屋台も」あると書いています。味つけは「タイの醤油やオイスターソース、砂糖、にんにく、ココナッツミルク、ペッパー等の調味料やスパイスにつけた豚肉」を串にさして焼いたもので、もち米と合わせます。家でつくるなら、この材料はほとんど日本の台所にもあります。ココナッツミルクが入るところだけが、日本の焼き鳥のたれと違う点です。

トムヤムクンには何が入っているのか

屋台でも食堂でも出てくるトムヤムクンは、2024年にユネスコの無形文化遺産の代表一覧表へ「Tomyum Kung」として記載されました。ユネスコの記載文(英語)は、この料理を、エビをレモングラス・こぶみかんの葉・ガランガルの根・シャロットといったハーブとともに煮て、その土地の調味料で味をつけたもの、と説明しています。

味については、甘味・酸味・旨味・辛味・クリーミーさ・わずかな苦味といった多くの味が組み合わさる、と書かれています。先ほどの「5つの味」と同じ考え方です。成り立ちも記されていて、タイ中部平野の川沿いの仏教徒の共同体で生まれ、大きな動物を殺すことを避けて、豊富にとれる淡水のエビを食べたことが背景にある、とされています。

家でつくるときに大切なのは、材料の顔ぶれです。レモングラス、こぶみかんの葉、ガランガルという三つの香りが、タイのスープと日本のスープを分けています。この三つは乾燥品でも手に入りますが、香りの立ち方は生とは違います。

屋台の味を決めているもの

卓上の調味料入れが答えを言っています

TATの公式ページは、屋台やレストランのテーブルに「クルーン・プルン」が置かれていると書いています。中身は「砂糖、ナンプラー、粉唐辛子、唐辛子入り酢の調味料セット」で、「麺料理など自分の味に整えるのがタイ流です」と説明されています。

これは、家でつくるときの設計図でもあります。甘味(砂糖)、塩味と旨味(ナンプラー)、辛味(粉唐辛子)、酸味(唐辛子入り酢)。この四つを手元に置き、最後に自分で足す。作る側で完成させきらないのが、屋台のやり方です。うまくいかないときは、たいてい酸味か甘味が足りていません。

ナンプラーは何でできているか

味の土台になるナンプラーは、ヤマモリの公式商品ページで名称が「ナンプラー(魚醤)」、原材料名が「かたくちいわし、食塩、砂糖」と表示されています。150mlで330円(税別)です。魚と塩からつくる調味料なので、日本の醤油の代わりに使うと塩気の出方が変わります。同じ量を置き換えるのではなく、少しずつ足して決めてください。

家でつくるときの、三つの入り口

ゼロから香辛料をそろえる方法だけが道ではありません。入り口は三つあります。

  1. 合わせ調味料から入る … 具を炒めて混ぜるだけの調味料を使います。まず味の着地点を知るのに向きます。
  2. カレーペーストから入る … ペーストとココナッツミルクを買い、火の入れ方だけ覚えます。応用がききます。
  3. 麺から入る … 麺・スープ・具を別々に選びます。屋台の注文と同じ順序です。

合わせ調味料から入る

ヤマモリの公式サイトの「タイフード」の一覧には、「タイクック」という名前で合わせ調味料が並んでいます。2026-08-31に確認できたのは、ガパオの素(本場タイの辛さ)、辛くないガパオの素、プーパッポンカリーの素、カオマンガイの素、グリーンカレーの素、トムヤムクンの素、パッタイの素、カオソーイの素の8種類です。屋台や食堂で見かける料理が、ほぼそのまま並んでいます。

中身を見ると、味の組み立てが分かります。「タイクック ガパオの素(本場タイの辛さ)」は名称が「タイ料理合わせ調味料」で、内容量と価格は80g/250円(税別)。原材料名は「バジル、ナンプラー、砂糖、唐辛子、オイスターソース、大豆油、にんにく、でん粉、しょうゆ、食塩」からはじまる表示です。バジル、ナンプラー、砂糖、唐辛子、オイスターソース、にんにく。この六つが、あの一皿の骨組みだということです。手元にある材料でつくるときも、この並びを目安にできます。

カレーペーストから入る

タイのカレーは、ペーストが正体です。ヤマモリの公式商品ページに載っている原材料表示から、二つのカレーの中身を並べます。

商品カレーペーストの表示(そのまま)ココナッツミルク
タイカレー グリーンレモングラス、唐辛子、にんにく、シャロット、食塩、こぶみかんの皮、ガランガル、ケール、その他使う
タイカレー ゲーンパー唐辛子、レモングラス、ガランガル、こぶみかんの皮、にんにく、食塩、その他使わない

ゲーンパーについて、同社の公式ページは「『森のカレー』と呼ばれる、山の素材を生かしたタイ中部地方のカレーです。ココナッツミルクを使用せず作るのが特徴で、ハーブのすっきりとした香りと、ナンプラーの旨味、唐辛子と黒胡椒の刺激的な辛さをダイレクトに感じられる味です」と説明しています。つまり、タイのカレーがすべて甘くまろやかなわけではありません。ココナッツミルクを入れるかどうかは、料理ごとの選択です。

グリーンカレーの側は、公式の説明で「新鮮なグリーンの唐辛子がおいしさのベース。ココナッツミルクたっぷりのチキンカレーです。スイートバジル、こぶみかんの葉、パクチー(香草)、レモングラスなどの香りと、辛い中にも甘みの感じられる深みのある本格的なタイカレーです」とされています。同じタイカレーでも、使うバジルの種類まで違います。

ココナッツミルクは、分けて使います

家でつくって「なんとなく薄い」と感じるとき、原因は火の入れ方であることが多いです。ヤマモリの公式レシピ「タイナスのグリーンカレー」(4人分)は、手順をこう書いています。

  1. 鍋にココナッツミルクのサラサラな部分、水、鶏肉を加え、沸騰したらアクを取り、蓋をして弱火で鶏肉に火が通るまで煮込みます。
  2. 別の鍋にココナッツミルクの固まった部分の半量を入れ加熱し、油が分離したらペーストを入れて香りが出るまで炒めます。
  3. 2に1(鶏肉を煮したスープ200cc)と調味料を上から順番に加え、スイートバジルの香りが立ったら、ココナッツミルクの固まった部分の残り半量を加え、すぐに火を止めます。
  4. 器に盛り、お好みでタイ米と一緒にいただきます。

要点は二つあります。ひとつは、ココナッツミルクの固まった部分と液体の部分を分けて使うこと。固まった部分を熱して油が分離したところにペーストを入れて炒める、という工程が香りを出しています。もうひとつは、最後に加えたココナッツミルクは煮立てないこと。手順ではバジルの香りが立った時点で残りを加え、すぐ火を止めています。

同じレシピの材料は、グリーンカレーペースト1袋、ココナッツミルク250ml、鶏ささみ300g、水300cc、ナンプラー大さじ1、タイナス9〜15個、スイートバジル20枚(6g)、砂糖小さじ2、赤唐辛子2本(お好みで)です。ナンプラーと砂糖が両方入っている点に注目してください。塩味と甘味を同時に置くのが、タイの味つけの型です。

米はどれを使うか

中部の料理は細長いうるち米と、東北部の料理はもち米と食べる、というのがTATの説明です。ソムタムやガイヤーン、ムーピンを再現するなら、もち米を用意したほうが食卓の形が合います。

いわゆるジャスミンライスの代表的な品種は、タイ農業・協同組合省 稲作局の資料に載っている「カオドークマリ105」です。同局のRice Knowledge Bankは、この品種を「細長い形の米粒」で、アミロース含量が低く(12〜17%)、炊いた米は「やわらかく、香りがある」と記しています。産地は東北部と北部上部です。日本のうるち米とは性質が違うので、水加減は袋の表示にしたがってください。

炊く手間をかけたくないときは、温めるだけのものもあります。ヤマモリの「ジャスミンライス」は、公式ページの表示で名称が「包装米飯(白飯)」、原材料名が「うるち米(タイ産)/酸味料」、内容量と価格が170g/310円(税別)です。生米ではなくパックのごはんである点に注意してください。

材料はどこで買えるか

日本で買うとき

メーカーの公式サイトで、商品名と内容量と価格を確かめてから探すのが早道です。ヤマモリの公式「タイフード」の一覧には、2026-08-31時点で、レトルトのタイカレーが9種類(グリーン、レッド、イエロー、プーパッポン、マッサマン、パネーン、プリック、マンゴー、ゲーンパー)、ガパオライスとジャスミンライス、ごはんにかけるトムヤムスープ、タイクックの合わせ調味料8種類、ナンプラー(150mlと100ml)、スイートチリソースが並んでいます。何が売られているかを先に知っておくと、店頭で迷いません。

タイで買うとき

タイのスーパーでは、カレーペーストは小袋で棚に並びます。ロータス(Lotus's)の公式オンラインストアで2026-08-31に確認できたグリーンカレー用のペーストは次のとおりです。

商品名(表示のまま)ブランド内容量表示価格
กนกวรรณ น้ำพริกแกงเขียวหวาน 100 กรัมKANOKWAN100g24バーツ
น้ำใจพริกแกงเขียวหวาน 100ก.NAMJAI100g22バーツ

100gで20バーツ台という値段です。日本で買うより、材料をそろえる負担はずっと軽くなります。値段は改定があるので、商品ページの表示で確かめてください。棚の分類名も参考になります。カノックワンの商品は「พริกแกงสด(生のカレーペースト)」、ナムジャイの商品は「เครื่องแกงและปรุงรส(カレーの素と調味料)」という区分に置かれています。

台所で気をつけること

加熱と保存

タイ料理は、挽き肉、鶏肉、豚肉、魚介を扱う料理が多くなります。厚生労働省は家庭での食中毒予防について、細菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」の三原則を挙げ、加熱の目安を「中心部の温度が75℃で1分間以上加熱すること」としています。ガパオのように挽き肉を強火で短く炒める料理では、ここが甘くなりがちです。

同じページには、ほかにも実務的な数字が出ています。「冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に維持することがめやすです」。そして「生の肉や魚を切った包丁やまな板は、洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です」。青パパイヤやハーブを生のまま使うタイのサラダでは、この順番が効いてきます。残ったものを温め直すときの目安も「75℃以上」です。

タイの台所でつくるとき

タイに住んでいて自宅でつくる場合は、水の扱いが加わります。厚生労働省検疫所(FORTH)のタイのページは「水道水をそのまま飲むことは避け」と書き、食べ物については「十分加熱されたものを、冷めないうちに食べるようにしましょう」としています。同じページによれば、タイで「患者数のもっとも多い病気は急性下痢症」です。麺をゆでた後に水でしめる、氷を入れる、生野菜を洗う。水が直接口に入る工程では、飲用に適した水を使ってください。

作るか、食べに行くか

家でつくると決めたときに用意するものを、ここまでの公式情報から並べておきます。

  1. 四つの調味料 … 砂糖、ナンプラー、粉唐辛子、酸味(酢やライム)。卓上のクルーン・プルンと同じ顔ぶれです。
  2. 三つの香り … レモングラス、こぶみかん、ガランガル。トムヤムクンや家庭の香りづけにはを、市販のカレーペーストにはを使います(上の原材料表のとおりで、どちらも同じ木のものです)
  3. ココナッツミルク … 使う料理と使わない料理があります。使うときは固まった部分と液体の部分を分けます。
  4. 米か麺 … 中部の料理ならうるち米、東北部の料理ならもち米。麺なら太さから選びます。

それでも、家でつくるより出かけたほうが早い日はあります。屋台そのものの見方はタイの屋台、食べる前に知っておくことに、北部の汁麺についてはバンコクのカオソーイ、食べる前に知っておくことにまとめています。実際に店を選ぶ段になったらバンコクの飲食店の口コミと評価を見てください。

タイの飲みものの話はタイのレッドブル、クラティンデーンとはで扱っています。日本の味が恋しくなったときはバンコクで寿司を食べるときバンコクの居酒屋と焼き鳥を、食べる・飲むの話をまとめて見たいときは食べる・飲むの記事一覧をどうぞ。

出典

このページの内容は 2026-08-31 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。