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タイのリタイアメントビザ、50歳からの条件とお金

タイに「リタイアメントビザ」という名前のビザはありません。使うのはノンイミグラント O-A、O-X、そしてタイでの滞在延長の3つです。年齢とお金の条件、必要な健康保険の額、90日ごとの届出、税金と年金までを公式情報だけで整理しました。

この記事の要点

  • O-A、最長10年のO-X、タイに着いてから延ばす手続きの3つで違いが一番出るのは、お金を置く口座の場所です。O-Xと延長はタイにある銀行と指定され、O-Aに所在地の指定はありません。
  • O-AもO-Xも50歳以上が条件で、就労は一切禁止です。タイでの延長は月6.5万バーツ以上の収入か80万バーツ以上の預金、O-Xは300万バーツ以上、または180万バーツ以上と年収120万バーツ以上です。
  • 預金は置く期間まで決まっています。タイでの延長なら申請日の2か月前から、許可が下りたあと3か月間は80万バーツ以上を置き、その後に引き出しても40万バーツを下回れません。
  • O-A には健康保険が要り、タイ側の必要書類欄では10万米ドルまたは300万バーツと併記されています。延長は保険の補償期間に合わせた長さになるので、短く掛けるとそこで切られます。
  • 着いたあとも90日ごとの住居の届出が続きます。国外へ出るときに再入国許可を取らないと、タイに滞在する許可は終了したものとみなされるので、旅行の前に確かめてください。

日本で「タイのリタイアメントビザ」と呼ばれているものは、タイ政府がその名前で出しているビザではありません。実際に使うのは、ノンイミグラントビザ O-A(ロングステイ・1年)同 O-X(ロングステイ・最長10年)、そしてタイに入国したあとに「引退(retirement)」を理由として滞在許可を1年ずつ延ばす手続きの3つです。このページは、その3つがそれぞれ何を求めるのか、着いたあとに毎年・90日ごとに何が残るのか、税金と年金はどう扱われるのかを、タイ政府と日本政府の公式情報だけで並べたものです。どの代行業者に頼むかという話は扱いません。

入口は3つあり、お金の置き場所が違う

  • O-A(1年) … 50歳以上が対象です。在ウェリントン・タイ王国大使館の案内は「1年を超えない滞在」「就労は一切禁止」と書いています。在シンガポール・タイ王国大使館の案内は「このビザの保持者はタイに1年滞在できる」と明記しています。
  • O-X(最長10年) … 50歳以上で、日本を含む14か国の国籍と旅券を持つ人だけが対象です。在ハーグ・タイ王国大使館の案内は「ビザの有効期間5年+さらに5年の延長で最長10年」「就労は一切禁止」としています。
  • タイでの滞在延長 … すでにノンイミグラントビザで入国した人が、タイ国内の入管で延ばす手続きです。バンコクを管轄する入国管理局第1部の一覧に「22. Visa Extension - In the case of retirement」として条件が公開されています。

3つの違いで一番効くのは、お金をどこの口座に置くかです。O-X とタイ国内での滞在延長は、条文に「タイにある銀行」と書かれています。一方 O-A の案内には口座の所在地の指定がなく、金額も「80万バーツ(または相当額)」と書かれています。手元の資金をタイへ移す前に、自分がどの入口を使うのかを決めておくほうが安全です。

年齢は50歳から。働くことはできない

O-A も O-X も「申請日の時点で50歳以上」が条件です。そしてどちらも就労は一切禁止と公館の案内に書かれています。O-X については、タイの雇用局が定める範囲でのボランティアは認められ、自動車の購入や、コンドミニアム法にしたがったコンドミニアムの購入もできる、と在ハーグ大使館が挙げています。

タイで働いて収入を得たいのであれば、そもそも別のビザの話になります。就労のビザと会社側に求められる条件はタイの就労ビザ代行を比べるの面にまとめています。

いくら持っていることを示すのか

手続き示す金額どこの口座か
O-A(日本などで申請)過去2か月の残高が80万バーツ以上(または相当額)、または月6.5万バーツ以上の収入証明申請者名義の銀行口座(タイの銀行という指定はなし)
O-X(日本などで申請)300万バーツ以上、または180万バーツ以上+年収120万バーツ以上タイにある銀行
タイでの滞在延長月6.5万バーツ以上の収入、または80万バーツ以上の預金、または合算で80万バーツ以上タイの商業銀行または特定金融機関

O-A の金額は在ウェリントン大使館の必要書類欄にある「銀行が発行した過去2か月の残高証明で80万バーツ(または相当額)以上、あるいは月6.5万バーツ以上の収入証明」がもとです。年金受給者は年金の証明書も添えるように書かれています。

タイでの延長は、預金を置く期間まで決まっている

入国管理局第1部が公開している引退を理由とする延長の条件は、金額だけでなくいつからいつまで置くかまで指定されています。

  • 預金でいく場合 … 申請日の2か月前から、かつ許可が下りたあと3か月間、80万バーツ以上をタイの口座に置きます。3か月を過ぎれば引き出せますが、残高は40万バーツを下回ってはいけません
  • 収入と預金を合算する場合 … 申請日の時点で年収と預金の合計が80万バーツ以上。預金は同じく申請日の2か月前から、許可後3か月間置きます。その後に引き出すときは、元の預金額の50%以上を残す必要があります。
  • 収入だけでいく場合 … 月6.5万バーツ以上の収入の証拠(年金・利息・配当など)を示します。

許可は1回につき1年までです。ただし O-A で入った人は、加入している保険の補償期間に合わせた期間(1回あたり1年を超えない)で許可される、と同じ条文に書かれています。保険を1年より短く掛けると、延長できる期間もそこで切られるということです。

健康保険は補償額まで決まっている

在シカゴ・タイ王国総領事館は、O-A の申請者に健康保険が必要になったのは2019年10月31日からで、入院は保険年度あたり40万バーツ以上、外来は4万バーツ以上と説明しています。在ウェリントン大使館は、2021年10月1日からは新型コロナウイルス感染症の治療を含めて10万米ドル以上の補償が要る、と書いています。タイ側の必要書類欄では「10万米ドルまたは300万バーツ」と併記されています。

タイの保険会社で入る場合は、タイ損害保険協会が運営する longstay.tgia.org に参加会社の一覧があります。海外の保険会社で入る場合や、タイ以外の公的医療保障を使う場合は、保険会社が記入した所定の証明書に加えて、タイにある自国の大使館の証明、または自国外務省による署名認証が求められます。

O-X の保険については、公館によって書き方が違います。在ハーグ大使館は外来4万バーツ以上・入院40万バーツ以上とだけ書き、在シカゴ総領事館は2021年10月1日以降は300万バーツまたは10万米ドルと書いています。申請先の公館の案内で確かめてください。

保険に入れなかったとき

タイ国内での延長には逃げ道が用意されています。保険会社に加入を全部または一部断られた場合、申請の2か月前から300万バーツ以上をタイの口座に置くか、預金とほかの健康保険を合わせて300万バーツ以上にすれば足ります。ただし断られた証明が要り、しかもこの300万バーツは、上で書いた80万バーツの計算に入れてはいけないと明記されています。つまり別建てのお金です。

日本からの申請は画面の上だけで終わる

在東京タイ王国大使館は、ビザの申請はタイ外務省が運営する電子ビザの公式サイト(thaievisa.go.th)で行うよう案内しています。必要書類は各ビザの種類ごとにその公式サイトに載っており、東京の大使館へ申請する人は大使館が別に出している書類案内にしたがってアップロードします。

大使館が太字で注意しているのは、申請時に入力した情報は申請料を払ったあとに修正できないという点です。間違えたら再申請になり、申請後の返金は一切ありません。支払う前に入力内容を保存しておくよう勧めています。

東京の大使館が公開している申請料は次のとおりです(2024年6月27日から適用)。

ビザの種類申請料
ノンイミグラント(シングルエントリー)11,000円
ノンイミグラント(マルチプルエントリー)26,000円
O-A(ロングステイ・1年)26,000円
O-X(ロングステイ・10年)52,000円
LTR(マルチプルエントリー・10年)260,000円

O-A の必要書類には、残高証明や保険証券のほかに、有効期間が18か月以上残った旅券、タイでの滞在先を示すもの、無犯罪証明書健康診断書が並びます。無犯罪証明書と健康診断書はどちらも発行から3か月以内で、公証を受けたものが求められます。健康診断書は、タイの省令第14号が挙げる病気(ハンセン病、結核、薬物中毒、象皮病、第三期梅毒)にかかっていないことを示すものです。

配偶者が単独では O-A の条件を満たさない場合は、婚姻証明書を添えたうえで、配偶者はノンイミグラント「O」の基準で審査される、と在ウェリントン大使館が書いています。

着いたあと、ずっと続く手続き

90日ごとの住居の届出

一時滞在の許可を受けてタイに90日を超えて滞在する外国人は、90日ごとに住んでいる場所を入管に届け出ます。方法は、本人か代理人が窓口で出す、タイ郵便の書留で送る、インターネット(tm47.immigration.go.th)で出す、のいずれかです。期限の15日前から、期限の7日後までが受付の幅です。書留の場合は期限の15日前までに送ります。

遅れた場合は本人が窓口へ行き、2,000バーツの過料を払います。届け出ないまま摘発された場合は4,000バーツ以上で、さらに法令に従うまで1日あたり200バーツを超えない額が加算されます。金額は公式ページによって書き方が違います(入国管理局の案内は「2,000/逮捕5,000」、タイ政府の行政手続案内は「2,000/摘発4,000以上+1日200以内」。入国管理法(仏暦2522年)第76条の上限は5,000バーツ)。窓口で確かめてください。なお、いったん出国して入り直すと日数の数え直しになり、最後に入国した日が1日目になります。

1年ごとの滞在延長

延長の手数料は1,900バーツです。必要書類は申請書、旅券の写し、年金や利息・配当などの収入の証拠、タイの銀行が発行した預金証明と口座の写し、とされています。

国外へ出るときの再入国許可

ここが見落とされやすいところです。入国管理局第1部は「一時的な滞在を許可された外国人が、再入国許可を取らずに国外へ出た場合、タイに滞在する許可は終了したものとみなす」と書いています。様式は TM.8 で、手数料は1回限りで1,000バーツ、期間内に何度でも使える場合は3,800バーツです。せっかく延ばした1年が、旅行に出ただけで消えることがあります。

住まいの届出

入管には、外国人が滞在している場所を届け出る仕組み(TM.30)もあり、バンコクの入国管理局第1部の英語版トップからオンラインの届出ページに入れます。実際に届け出るのは家の所有者や管理者なので、部屋を借りるときに大家さんや管理会社が対応してくれるかを先に確かめてください。

税金は「タイに送ったお金」で決まる

タイ歳入局が出しているリーフレット「HOW DO FOREIGNERS LIVING IN THAILAND PAY TAX?」は、外国人の課税をこう整理しています。

  • タイ源泉の所得 … タイでの労働、タイでの事業、タイにある資産から生じた所得は、支払いがタイの内か外かに関係なく課税されます。
  • 国外源泉の所得2024年1月1日以降に得た所得で、その所得を得た年に暦年で180日以上タイに滞在していた人が、その所得を(一部でも)タイに送金した場合に課税されます。送金が翌年以降になっても同じです。
  • 2024年1月1日より前に得た国外所得を後からタイへ送っても、タイの税はかかりません。タイの税務上の居住者でない人が国外で得た所得も、後から送金しても課税されません。

申告は個人所得税の申告書(P.N.D.90 または P.N.D.91)で行い、タイ源泉の所得と、その年にタイへ送金した国外所得を合算します。国外で払った税は、租税条約で認められる範囲でタイの税から差し引けます。控除できる額は、その国外所得に対応するタイの税額が上限です。証拠として、外国の税務当局が発行した納税証明書を用意するよう勧められています。

なお居住者の線引きは、このリーフレットが「暦年に180日以上」と書き、歳入局の英語版の個人所得税の解説ページは「暦年に合計180日を超えて」と書いています。境目にあたる滞在をする人は歳入局に直接確かめてください。

日本の側でやっておくこと

在留届

旅券法第16条により、外国に住所や居所を定めて3か月以上滞在する日本人には、その地域を管轄する日本大使館・総領事館へ在留届を出す義務があります。原則はオンライン在留届(ORRネット)で、日本から転居する場合は現地到着の90日前から提出できます。住所や連絡先が変われば変更届、帰国や第三国への転居のときは帰国・転出届を出します。3か月未満の滞在は「たびレジ」への登録です。

年金の受け取り

日本の年金を海外で受け取るには、「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」の提出が必要です。海外の金融機関を振込先に指定するときは、口座証明や通帳の写しなどを添えます。受けているのが老齢年金で、日本と滞在国が年金の受け取りに関する租税条約を結んでいる場合は、「租税条約に関する届出書(様式9)」を出すことで、税法上の非居住者が納めるべき所得税の免除を受けられます。

受け取り始めたあとも手続きは残ります。海外に住む受給者は年1回「現況届」を出す必要があり、期限は誕生月の末日です。日本国籍の人は、住んでいる国の日本領事館などが発行した在留証明を添えます。添付する証明は、誕生月を含めて過去6か月以内に証明を受けたものが有効です。

年齢やお金の条件が合わないとき

50歳に届かない、あるいはタイの口座に大きな額を置き続けたくない、という場合には別の枠組みもあります。

タイ投資委員会(BOI)が運用するLTRビザには「Wealthy Pensioners(富裕層年金受給者)」という区分があり、50歳以上で年金や安定した不労所得がある人が対象です。求められるのは申請時点で年8万米ドル以上の不労所得(給与などの勤労所得は算入されません)で、4万米ドル以上8万米ドル未満なら、タイ国債・タイ登記会社への直接投資・タイの不動産のいずれかに25万米ドルを投じることが加わります。健康保険は5万米ドル以上の補償、またはタイの社会保障、または本人名義で10万米ドル以上を12か月以上預金、のいずれかです。ビザは10年のマルチプルで、タイ国内で受け取る場合の手数料は1人あたり5万バーツ。90日ごとの届出が1年ごとになり、再入国許可も不要になる、とBOIが特典に挙げています。

会員料金を先に払って滞在権を買う仕組みもあります。値段と年数、何ができて何ができないかはタイランドエリート(プリビレッジ)で長く滞在するにまとめました。その先の永住権についてはタイの永住権はどういうものかを見てください。

O-X には取り消しの条件も公開されています。滞在1年目の終わりに口座の残高が300万バーツを下回った場合、2年目の終わりに150万バーツを下回った場合、その口座のお金をタイの外で使った場合、保険を持っていない場合、許可なく働いた場合が挙げられています。10年のビザではありますが、10年ぶんの自由が最初に確定するわけではありません。

暮らしの側の見当をつける

ビザの条件を満たせるかどうかと、実際にそこで暮らせるかどうかは別の話です。住まいを買うか借りるかで必要な資金は大きく変わります。外国人の所有についてはタイでコンドミニアムを買うときに整理しました。家事を人に頼む場合の相場と雇い方はタイでメイドさんに来てもらうにあります。そもそもタイでよいのかを他の国と並べて考えたい方は住む国を決める前に見ておくことから読んでください。

タイで暮らすまわりの記事はタイで暮らすの記事一覧から辿れます。

どこで確かめるか

金額も要件も、告示や入管の内部通達で変わります。読むべき一次情報は次の3か所です。

  • ビザの申請 … タイ外務省の電子ビザ公式サイトと、申請先となる公館(日本なら在東京タイ王国大使館)の案内。必要書類は公館ごとに追加があります。
  • タイに着いてからの延長・90日の届出・再入国許可 … 自分が住む地域を管轄するタイ入国管理局。バンコクなら入国管理局第1部です。
  • 健康保険 … タイ損害保険協会のロングステイビザ用ポータル。参加している保険会社と、必要な証明書の様式が置かれています。

このページに載せた金額と条件は、2026-09-01時点の表示を確かめたものです。ただし確かめた先は上の3か所だけではありません。O-A・O-X の必要書類と金額は、在ウェリントン・在シンガポール・在ハーグ・在シカゴの各タイ大使館/総領事館の案内から取っています(出典欄に4件とも載せてあります)。公館と申請の区分によって、書き方・追加書類・金額だけでなく、口座をどこに置くか(タイ国内か国外か)と、いつから残高を置いておくか(据置期間)も違いうるので、必ず自分が申請する公館の案内で確かめてください。日本の公館の案内は未確認です。ここに書いた条件は「どの公館でもこうなる」という意味ではありません。とくに、この記事が「一番効く」と書いている『お金をどこの口座に置くか』も、公館と区分で違いうるものです。

出典

このページの内容は 2026-09-01 に確認しました。料金・制度・営業情報は変わることがあります。